中国当局による外貨送金の締め付けで、オーストラリアの不動産市況が影響を受けそうだと報じられています。(豪経済紙Financial Reviewの報道)
従来から、中国から海外への送金額は年間5万米ドル(約600万円)が上限と定められていましたが、これまでは例外措置が広く認められていたようです。
海外留学中の子弟の住まい購入を名目として、数億円の送金も可能だったわけです。
現在は、海外への資金流出を抑えるため、こうした例外措置が厳密に審査されるようになったと報じられています。
おそらく、学生一人が住むのに数億円の豪邸や3LDKのマンションは必要ないとか、2件目は不要なはずとか、送金目的を実質的に審査するようになったのではと推察します。
同報道によると、主に中国本土の顧客を扱う仲介業者の話として、オーストラリアへの送金が難しくなったとぼやいている顧客が増えているそうです。
この仲介業者は、既に海外に資金を移し終えているのでなければ、海外不動産購入の契約書にサインするな、と中国本土の顧客にアドバイスしています。
いざ決済日を迎えても、残額の送金を当局にブロックされるおそれがあるためです。この場合、債務不履行となって、頭金を没収されてしまいます。
1、2年前に売買契約を結んだプレビルド(完成前)案件で、これから決済・引き渡しを迎えるにあたり、こうした問題が出てくるかもしれません。
プレビルド案件に関しては、契約締結と完成(決済)の時間差があるため、金融機関の融資姿勢が変わるリスクが指摘されていましたが、中国からの投資については送金リスクも増えたということです。
その場合、投資家が頭金を失うだけでなく、残金を受け取れないディベロパーの財務状況にも影響が及び、波紋が広がりそうです。
海外送金の締め付けはオーストラリア向けに限った話ではないため、東京の不動産マーケットでも同様の問題が発生するかもしれません。
オーストラリアの不動産市場に関しては、500万ドル(4億円相当)以下の物件については、中国本土からの投資資金が細る可能性が指摘されています。
なお、500万ドルを超える物件を購入する超富裕層に関しては、海外にビジネスを所有していたり、既に海外に多額の資金を有しているケースが多いため、今回の締め付けの影響はそれほどないだろうと言われています。
まだそうなるとは限りませんが、中国資金の減少と、ディベロパーの投げ売りが重なれば、既にピークを迎えたシドニー市場の調整が進みそうです。その場合、いずれ良い買い場が来ると考えています。