中国の調査会社によると、中国の富裕層のうち、海外に移住した人や希望している人が64%もいます。66%は国籍を捨ててもいいと考えているようです。政治リスク、環境汚染問題への懸念がその理由に挙げられています。
アメリカの住宅市場では、1年で2兆2000億円相当の資金が中国から流入し、外国人購入者のうちの24%を占めています。平均購入価格は約6000万円と外国人トップで、76%の購入者が現金払いです。
カナダでは富裕層を対象とした投資移民ビザの制度がありましたが、思ったほどの経済効果がなく、社会的な軋轢を生んでいるとして、大幅に制限されました。
このビザが下りるのを順番待ちしていた人が世界で6万5千人ですが、ビザをもらう道はほぼ閉ざされたようです。そのうち、4万5千人が中国本土と報道されています。
富裕層から列をなして母国から逃げ出そうというのですから、大変な状況です。
中国本土の富裕層に人気の海外の不動産投資先は、HSBC銀行の調査によると以下のとおりです。
・ 香港 49%
・ アメリカ 28%
・ シンガポール 14%
・ オーストラリア 9%
・ イギリス 9%
・ 台湾 9%
・ ニュージーランド 6%
・ マレーシア 4%
クレディ・スイス銀行調査によると、オーストラリアの住宅市場にも、中国から年間5千億円以上が流入しています。
シドニーでは、新築物件の5分の1が中国の投資家に売却されました。
東京でも、財閥系商社が開発した赤坂の分譲マンション(一戸6千~7千万円)で、中国、台湾の投資家が60%を占めたケースもあったようです。中国からの投資額は際立っています。
カナダへの投資移民の道がほとんど閉ざされたことによって、移民を希望する富裕層はオーストラリアに一層向かいそうですが、外国人による投資の増加は、オーストラリアでも徐々に社会的な注目を集めています。
経済の活性化につながるので賛成という立場と、値段が押し上げられて自国の庶民が住宅を変えなくなると反対する立場に分かれています。
オーストラリア中央銀行の総裁が議会で証言した内容によると、外国人への購入許可件数は、直近9か月で既に1万件以上の許可が出ており、2013年全体の6,500件を上回っています。
(明らかな規定違反でもない限り、基本的に申請すれば許可が出る制度です)
また、海外からの住宅投資金額は、全国の住宅の価値に占める割合で12%に上昇しています。(従来の水準は5~10%)
海外からの住宅投資のほとんどは、シドニーとメルボルンの中心地に近い新築マンションです。2013年の実績では、これら2都市で80%近くを占めています。
2013年までの一年間で、外国人が購入した物件の平均価格は、中古物件が約1億円、新築物件が約6,500万円でした。
新築は誰でも購入できますが、中古はある程度の期間オーストラリアに滞在可能なビザを持っていないと購入できません。もっとも、留学ビザでも中古物件の購入ができるため、留学している子供名義で購入している中国の投資家が多く、制度が形骸化していることも問題になっています。
当面、中国からの資金流出は止まりそうもありません。伝統的に中国の投資家が好む地域への投資に乗っかるのも、今後も資金の流入が見込めて価格が支えられるということで、アイディアの一つでしょう。もちろん、既にバブルになっている地域で高値掴みしてはダメですが。