2014/08/08

世界の住宅市場に流入する中国マネー

中国の調査会社によると、中国の富裕層のうち、海外に移住した人や希望している人が64%もいます。66%は国籍を捨ててもいいと考えているようです。政治リスク、環境汚染問題への懸念がその理由に挙げられています。

アメリカの住宅市場では、1年で22000億円相当の資金が中国から流入し、外国人購入者のうちの24%を占めています。平均購入価格は約6000万円と外国人トップで、76%の購入者が現金払いです。

カナダでは富裕層を対象とした投資移民ビザの制度がありましたが、思ったほどの経済効果がなく、社会的な軋轢を生んでいるとして、大幅に制限されました。

このビザが下りるのを順番待ちしていた人が世界で65千人ですが、ビザをもらう道はほぼ閉ざされたようです。そのうち、45千人が中国本土と報道されています。
富裕層から列をなして母国から逃げ出そうというのですから、大変な状況です。

中国本土の富裕層に人気の海外の不動産投資先は、HSBC銀行の調査によると以下のとおりです。
・ 香港 49
・ アメリカ 28
・ シンガポール 14
・ オーストラリア 9
・ イギリス 9
・ 台湾 9
・ ニュージーランド 6
・ マレーシア 4

クレディ・スイス銀行調査によると、オーストラリアの住宅市場にも、中国から年間5千億円以上が流入しています。
シドニーでは、新築物件の5分の1が中国の投資家に売却されました。

東京でも、財閥系商社が開発した赤坂の分譲マンション(一戸6千~7千万円)で、中国、台湾の投資家が60%を占めたケースもあったようです。中国からの投資額は際立っています。

カナダへの投資移民の道がほとんど閉ざされたことによって、移民を希望する富裕層はオーストラリアに一層向かいそうですが、外国人による投資の増加は、オーストラリアでも徐々に社会的な注目を集めています。

経済の活性化につながるので賛成という立場と、値段が押し上げられて自国の庶民が住宅を変えなくなると反対する立場に分かれています。

オーストラリア中央銀行の総裁が議会で証言した内容によると、外国人への購入許可件数は、直近9か月で既に1万件以上の許可が出ており、2013年全体の6,500件を上回っています。
(明らかな規定違反でもない限り、基本的に申請すれば許可が出る制度です)

また、海外からの住宅投資金額は、全国の住宅の価値に占める割合で12%に上昇しています。(従来の水準は510%)

海外からの住宅投資のほとんどは、シドニーとメルボルンの中心地に近い新築マンションです。2013年の実績では、これら2都市で80%近くを占めています。

2013年までの一年間で、外国人が購入した物件の平均価格は、中古物件が約1億円、新築物件が約6,500万円でした。

新築は誰でも購入できますが、中古はある程度の期間オーストラリアに滞在可能なビザを持っていないと購入できません。もっとも、留学ビザでも中古物件の購入ができるため、留学している子供名義で購入している中国の投資家が多く、制度が形骸化していることも問題になっています。

当面、中国からの資金流出は止まりそうもありません。伝統的に中国の投資家が好む地域への投資に乗っかるのも、今後も資金の流入が見込めて価格が支えられるということで、アイディアの一つでしょう。もちろん、既にバブルになっている地域で高値掴みしてはダメですが。

2014/08/05

シドニー、メルボルンを中心に堅調な価格上昇

オーストラリア主要都市の不動産価格は、直近1年間、堅調に推移しています。

シドニー(下図の水色)が15%上昇でダントツですが、メルボルン(紺色)も10%超の上昇です。


出遅れ銘柄として期待されているブリズベン(茶色)ですが、ここからもうひと伸びできるかが見所です。

一部の先回り派の投資家を除いて、国内外の投資家の目は、今のところシドニー、メルボルンに向いています。

価格上昇を引っ張っている2都市がどこまで伸びるかです。シドニーでは平均的な住宅の価格が7,500万円相当と、既に一般の投資家や実需層には手が出しにくい水準に近づいています。

シドニー、メルボルンでは手が出ない、今から投資してもうまみがない、という見方が今より一般的になれば、ブリズベンに資金が向いてくるでしょう。

とはいえ、2015年中か2016年前半には中央銀行の利上げが見込まれており、2011年頃に始まった今回の不動産価格上昇のサイクルは、せいぜい2016年までとされています。

出遅れたブリズベンの価格が割安で、これから上昇すると予想されているとはいえ、中央銀行の利上げは全国に影響します。利上げがブリズベンの価格上昇に水を差す可能性は十分考えられます。

シドニー、メルボルンは価格上昇の恩恵を十分に享受しました。これからブリズベンにも順番が回ってくるかが見ものです。

2014/08/04

東京ワンルーム投資の行く末

このところ、東京23区内のまともなワンルーム物件は、築20年以上でも、表面利回りで8%台になっています。それも私鉄マイナー路線の、都内在住者にもあまり知られていない駅だったりします。

不動産業者から送られてくる売り物件リストを見ると、都内の比較的好立地で利回り9%、10%のものだと、借地権(土地の所有権なし)、家賃比で建物管理費が異常に高い、修繕積立金が貯まっていないなど、何か難のある物件ばかりです。

2010年、2011年頃までは、23区内で、立地、価格、管理状況などの諸条件のそろった物件でも、表面利回りで10%前後でした。

2012年には、アベノミクス前から、そろそろ底打ちと言われ、価格は上がっていなくても、条件のそろった物件が市場に出回ることが少なくなっていた印象です。将来の値上がりを見越して、売り惜しみが出始めていたのでしょう。

2013年以降は明らかに価格が上昇しています。2010年ごろの感覚で物件を探していたら、何も買えません。

現在の一般的な表面利回り8%台なら、数年前には六本木、麻布、渋谷、表参道など本当の都心で物件を買えた水準です。

数年前まで、東京のワンルーム投資は、キャピタルゲインは毎年ややマイナスで、その分、表面利回り10%程度のキャッシュフローで稼ぐ投資でした。

もっとも、年間のキャッシュフローによる利回りが10%から8%に低下しても、キャピタルゲインが2%以上見込めるのであれば、総合的な投資の魅力は変わりません。

仮に、キャッシュフローの利回りが8%で、さらにキャピタルゲインが毎年5%見込めるという状況になれば、以前より投資としての魅力が増しています。

近年、海外からの投資が増えているという話をよく聞きますが、以前より東京の不動産投資の魅力が向上していると判断した海外投資家が増えているということです。

ただ、キャピタルゲイン狙いの投資家は、ここが売り時と思えばどんどん売ってきます。出口の時期の見極めは必要です。

オーストラリアのように人口が増え続けている国であれば、仮に今回の不動産価格上昇のピークは過ぎたとしても、またいつか景気が良くなったり、金利が低下した時期に、改めて価格が上昇に転じる可能性があります。売り逃しても、またチャンスは回ってくるでしょう。

一方、東京のように将来の人口減少が予測されている都市の場合は、インフレ率以上に不動産価格が上昇していくのは、おそらく今回が最後だと思われます。

今回の価格上昇の波に乗れないのはもったいないですが、東京五輪開催ごろと言われるピークの売却時期を逃して、価格、家賃も下がる一方の状況で保有を続ける状況にならないよう注意が必要です。

不動産は一生の買い物という感覚の日本では、不動産を買うからには長期的な投資ではないかと考えがちですが、海外では必ずしもそうではありません。業者ではなく、個人投資家ですら、安値で買って、修繕・内装を施し、すぐに高値で転売するのを繰り返している人もいます。

キャピタルゲイン狙いの海外投資家にとっては、2014年から2020年までの6年間というのは、十分な保有期間です。問題は、彼らがどの時点で出口を探るかです。

2014/08/01

加熱する東京の不動産

東京の不動産も熱を帯びてきました。不動産投資の活発化を裏付ける兆候として、以下のものが挙げられています。

日本で、賃貸用不動産を所有しているのは320万人。株の個人投資家は1200万人で、その4分の1を超える人数にまで一般化。

大手不動産情報サイト「建美家」の閲覧者数は月30万人と、アベノミクス開始前の2012年秋から倍増。

その間、同サイトに掲載されている投資用不動産の平均価格は、1000万円から1300万円台半ばへ上昇。
表面利回りは、10%後半から8%前半へと下落。

出典 不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家

オリックス銀行の投資用不動産ローンの残高は約8600億円と、2年間で2割以上増加。

また、2015年からの相続税増税が予定されており、資産評価額の圧縮を通じた節税のため、不動産投資を行う層も増えているようです。

物件の価格と表面利回りから計算した家賃額は、この2年間、ほとんど変わっていませんので、物件価格の上昇は、利回りの低下によるものです。

なお、上図の価格は売り出し価格の推移ですので、成約価格の推移は異なるかもしれません。それでも、売り手が強気になっていることは十分に伺えます。

キャッシュフローに関しては、現在の8%前半でも、世界の主要都市の中ではまだ高い利回りです。オーストラリアでも、シドニー、メルボルンは4%台、ブリズベンで5%台が普通です。

仮に表面利回りが7%くらいに低下しても、世界的にはまだ十分な利回りと見做されるのではないでしょうか。

これだけ高い利回りに加えて、キャピタルゲインも見込めるということで、世界(特にアジア)の投資家から注目されるのも当然といえます。

長年、日本の不動産投資は、経年でキャピタルロスが発生するかわりに、それを上回る利回りで稼ぐというモデルでした。

目下のところ、アベノミクスもあって、高利回りに加え、キャピタルゲインも発生するという、ある種、特異な状態になっています。

我々が数年前に物件を購入した際には、毎年のキャッシュフローと、将来のインフレを見込んで、ローン残高の実質的な目減りが起きればよい思っていましたが、インフレ率以上に価格が上昇するとは本当に理想的です。

長期的に見れば東京でも人口は減少するわけですが、新規物件の供給は続いています。このため、将来のどこかの時点で、価格も下げに転じることが想定されます。潮目の変化は、2018年から2020年頃と想定している専門家が多いようです。

年間5%程度までの下げなら、家賃収入のプラスである程度は収支が取れるでしょう。価格がじわじわ上がって、東京五輪後もじわじわ下がるなら、慌てて売り時を考えることもありません。

しかし、今後、バブル的な様相を示すようであれば、毎年の利回り収入ではカバーできないくらい、反動で価格が下がるかもしれません。そうなるようなら、売り時を見計らう必要がありそうです。

数か月前から、ワンルーム投資用のローンを2012年頃に停止していた外資系金融機関が、新規融資を再開していますし(キャンペーンで以前より金利が下がっているようです)、これまでワンルームを対象にしていなかった金融機関も参入しています。

物件価格は、景気もさることながら、金融機関の融資姿勢に左右されます。ワンルームへの融資条件が緩和され、金融機関同士の競争で金利も下がるようだと、ますます価格は上昇していくでしょう。

金融機関がワンルーム融資に参入するにあたっては、諸々のリスクや市況予測などを検討した結果のはずです。今年参入した金融機関が、すぐ来年には止めるということはないでしょうから、当面は物件価格は堅調に上がっていくと思われます。

仮に金融機関が、近い将来の物件価格が下がると予測しているのであれば、ローンの担保価値が下がる(ローンを回収できないリスクが高まる)ということになりますから、積極的に融資を行うことはありません。

長期的には、東京も高齢者の割合が増えます。しばらく世帯数は減少しないのですが、これは高齢者を中心に単身世帯が増えるためです。

ワンルームマンションに関しては、空室を埋めるのはなんとかなるかもしれません。

しかし、家賃相場と平均所得の推移には相関関係がありますので、年金受給者世帯の割合が増えるにしたがい、家賃には下落圧力がかかり続けるでしょう。

なお、オーストラリアでは、東京の不動産はあまり知られていません。自国市場が堅調だからということもあるでしょうし、英語圏でもないので、一般の投資家には検討の対象外です。

それでも、東京では数百万円から投資できること、利回りが10%近いと教えると、一様に驚きます。