シドニーのオークション成約率は、今週も70%を割り込んだようです。2016年半ばごろからの価格下落を予測する声が増えてきました。
一方、ブリスベンは60%弱と、60%前後での推移が定着してきました。市場が温まってきたようですが、どんどん値上がりするほどの熱気ではありません。
シドニーとブリスベンの住宅価格の差は、十数年ぶりの水準にまで拡大しています。今後数年のスパンでは、ブリスベン、ゴールドコーストが価格上昇の主役候補として挙げられることが多いですが、年率4~5%程度の穏やかな上昇というのが大方の予測です。
ブリスベンが割安とはいえ、資源価格の低迷が続き地域経済もそれほど好調とは言えないこと、金融機関がローン金利の引き上げに転じたことが、穏やかな上昇に留まる理由とされています。
4大銀行の住宅ローン金利は、Westpac銀行を皮切りに、1、2週間のうちに、ローン金利引き上げで全行そろい踏みとなりました。金融機関の横並び意識は、世界共通のようです。
今回の利上げは過熱する不動産市場への警鐘が主な理由とされており、他行も追随して対策を取った形にしておかないと、後で経営責任を問われかねないという考えかもしれません。
これから中小の金融機関にもローン金利引き上げが広がると言われています。少なくとも、金利を下げて顧客を獲得しようとする競争にはストップがかかったと言えます。
豪中央銀行が利下げすると、金融機関も住宅ローン金利を下げるというリンクは、今回の動きで途切れました。
中央銀行としては、不動産市場の過熱を気にすることなく、景気刺激策として利下げしやすい環境となるため、豪経済全体にとっては悪くない話かもしれません。
中央銀行としては、不動産市場の過熱を気にすることなく、景気刺激策として利下げしやすい環境となるため、豪経済全体にとっては悪くない話かもしれません。
過去の値動きを見ても、シドニー、メルボルンで価格が高騰してから、ブリスベンも後追いで価格が上がりはじめる傾向があります。このタイムラグは、概ね1年から1年半と言われています。
今回もようやくブリスベンに順番は回ってきそうですが、残念ながら全般的な投資環境に関して逆風が吹いている状況です。
専門家の見解も以前と比べてトーンダウンしており、おそらく、2018年くらいまでの今回の上昇局面では、ブリスベンが大幅上昇を見せることはなさそうです。次回の上昇局面で、金融機関の積極的な融資姿勢、資源価格の回復が重なると、シドニーとの価格差を埋めるべく、ブリスベンがブームを迎えるかもしれません。
また、ブリスベンの戸建ての価格は、シドニーと比べればそれほど高くありません。シドニーでは比較的都心に近いエリアに住みたければ、一般の人には戸建ては論外で、当然マンションとなりますが、人口が半分のブリスベンではまだ戸建てにも手が届きます。
当然ながら、同じエリアでそれほど値段が変わらないのであれば、マンションよりも戸建てが選好されます。また、「郊外の戸建てよりも、都心のマンションのほうが格好いい」という意識は、シドニーでは浸透してきていますが、ブリスベンではまだまだです。
したがって、当面のブリスベンの価格上昇局面では、おそらく戸建て中心に値が上がっていくと考えられます。単純化すると、手が出ない価格まで戸建て価格が上昇すれば、価格差を埋めるべくマンションも高騰が始まるというイメージです。
もっとも、自分が住む場合はともかく、投資物件としては、戸建てには維持管理の手間や、木造ならシロアリ、価格の割には家賃が取れない(家賃利回りが低い)などの問題もあります。
ブリスベンのような地方都市でマンションに投資する場合は、戸建てとマンションの価格差が大きい地区で、しかも新築マンションの大量供給が起きにくい地区を選定するべきと考えます。
戸建てとマンションの価格差が大きい地区とは、言い換えれば、地価が高く、よほどの高所得世帯でないと戸建てには手が出ないため、それなりの所得がある世帯でもマンションを選択せざるを得ないという地区です。
なお、近年の東京市場では、統計上、戸建てよりもマンションのほうが値上がり率は高いですが、これは戸建てが多い郊外エリアと、マンションが多い都心エリアの立地の違いが大きいでしょう。
オーストラリアでは、相続税がないことも関係していると思いますが、都心に近いエリアにも400~600㎡の敷地を有する戸建てがたくさん残っています。