2015/10/19

シドニー住宅市場 クールダウンの兆候

マーケットの熱を反映しやすいオークション成約率ですが、シドニーでは徐々に切り下がっています。
3か月前までは82%前後でしたが、10月17日時点、ついに65%まで低下しました(黒い折れ線)。週によって上下動はありますが、趨勢として下がってきているように見えます。

Source: Domain

一方、緑の棒グラフはオークションで売りに出された物件数(各週)です。こちらは趨勢的に増加しています。売り惜しみしていたオーナーが、そろそろ潮時と読んで売り物が増えていると考えられます。
※10月3日が少ないのは連休中を避けたためで、その前後の週が増えています。

先日、4大銀行の一つが、住宅ローン金利を0.2%切り上げたところですが、買い手の意欲は徐々に沈静化しています。一方、売り物は増えているため、複数の買い手が競って値を吊り上げることも起こりにくくなります。

なお、この銀行の動きが衝撃を与えたのは、投資用ローンだけでなく、自宅用の住宅ローンの金利も上げたためです。豪中央銀行はどちらかというと利下げに向かっているにもかかわらずです。
このため、(特にシドニーの)住宅市場はそんなにヤバいのか(銀行は、返済リスクを読み取ったから金利を上げた)という印象を与えました。

もっとも、シドニー住宅の価格については、中心地から離れた一部の地区を除いて、下がったという報告はまだありません。大方の予測では、もう少し(例えば5%程度)はまだ上がると言われています。その後も、緩やかな価格調整(1~2年をかけて、5~10%の下落)を予測する声が大勢です。

ピークに達した後も、株のように価格が急激には下がらないのは、住宅の6~7割が自己使用(自宅)であること、また、売却にも相応の取引コストがかかるため、価格が多少下がったとしても売りが売りを呼ぶ状況にはならないためです。

また、アメリカのサブプライム・ローン問題の際は、銀行差押えの競売が多発し、これが値崩れを誘発したようです。この原因は、(金融機関どうしの過剰競争で)誰にでもノン・リコースローンが提供されていたためと言われています。
※ノン・リコース:抵当に入れた住宅を銀行に明け渡せば、ローン残債は免除

オーストラリアでは、個人への融資でノン・リコースはありません。値下がりした自宅を売却したとしても、残債の返済を続ける必要があり、自宅を簡単に売りには出しません。結果として、住宅市場の値崩れが起きにくいと言われています。

もっとも、大都市の中の特定の地区については、投資用物件が8割を占めるケースもあり、もう儲からないとなったら売りが増えるおそれのある地区もあるため注意が必要です。

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