2014/11/26

オーストラリア不動産、価格上昇ペースが緩やかに

豪4大銀行の一角、ANZの調査によると、オーストラリア主要都市の不動産価格は上昇を続けているものの、上昇スピードが緩やかになっている傾向が読み取れます。

以下のグラフを見ると、2014年7月ごろをピークに上昇率が鈍化しています。(値下がりではありません)

Source: propertyupdate.com.au

シドニーに関しては、一時は年率15%を超える上昇を見せ、バブルではないかとの議論もありました。むしろ今回の減速は中長期的なマーケットにとっては好ましいかもしれません。

減速したとはいえ、なお年13%程度のスピードで価格が上昇している状況です。マイナス圏に入るのはまだ先になりそうです。

一方で、出遅れ銘柄として投資家から期待されていたブリスベンですが、落ち込みはないものの、他都市と同様に上昇速度が落ち着いている傾向が見えます。

このまま全国的な傾向に飲まれて価格上昇が止まるのか、それとも他都市からの投資が向かうことで出遅れを取り戻すのか、注目を集めています。

天然資源産業の都市としてこれまで急速に成長してきたパースですが、鉄鉱石価格の下落に伴い、大都市の中でもいち早く価格の減速が始まりました。

このままでいくと、そう遠くない時期にマイナス圏に突入しそうです。

地元の投資家のように機動的に動くのが難しい外国人投資家には、やはり多様な産業に支えられた大都市での投資をお勧めします。

オーストラリアでいえば、シドニー、メルボルン、ブリスベンが基本です。
それ以外の都市は、天然資源、観光など、特定の産業に経済も雇用も頼っていることが多く、浮き沈みが激しい傾向にあります。

つい数年前まで、オーストラリア人にも、高利回りで価格もどんどん上がっているということで、地方の小さな資源都市への投資がブームになっていたことがありました。

資源業界が活況の時期には、こうした小さな地方都市に一気に労働者が集まり、不足する住宅をめぐって家賃、価格とも急上昇しました。

家賃収入だけでも利回り10%、さらに物件価格が数年で2倍になったというケースもあったようです。良い時期に参入し、無事に売り抜けた投資家の中には、短期間で財を成した人もいたでしょう。

その頃は、ローンを組んで買えば買うほど儲かったという世界です。

しかし資源価格が下落し、鉱山も閉山となると、一気に街から人がいなくなります。かつての日本の炭鉱町のような状況です。不動産の価値が数年前のピークから半額に下がったエリアも珍しくありません。

そんなエリアで、まだまだ上がると思って5000万円で家を買った投資家は、今頃は2500万円の含み損を抱えていることになります。

ところで、日本人向けに紹介されている海外物件も、知名度や馴染みがあることが理由と思いますが、リゾート地が多いように見受けられます。

自分が住むことを主目的にするなら素晴らしい場所ですが、投資が目的であれば注意を要します。

地域経済が観光産業に依存しているケースがほとんどと思いますので、基本的に浮き沈みが激しいエリアです。

家計の観点からは、観光はいわば贅沢品ですから、景気が悪くなれば一番に切り詰められます。

そうした浮き沈みの激しいエリアで投資する場合は参入時期(高値掴みしないこと)が非常に大切です。

いくら将来は人口が増える見込みだといっても、バブル的な高値から落ち込んだ後、ピークの水準まで回復するのに10年かかることもあります。

底値水準で買って、ブームが来れば大当たりとなる可能性ももちろんありますが、海外で、それも不動産という高額投資でそういう勝負に出るべきかと考えると、当方は否定的です。

底値かどうかという点でも、景気の影響で足を引っ張られているのが原因か、それとも観光地としての地盤沈下が原因か見極めないといけませんから、現地に住んでいても判断は難しいです。

中国人富裕層の選ぶ海外の投資先

世界中に華僑ネットワークを持ち、利に敏いとされる華人の動きを見れば、世界的な富裕層のトレンドを把握する参考になります。

中国人向けに世界の投資用不動産を紹介しているポータルサイトJuwai.comによると、サイトの閲覧件数、取引件数から算出した、華人に人気の不動産投資先は以下のとおりです。

1位 アメリカ
2位 オーストラリア
3位 カナダ
4位 イギリス
5位 ニュージーランド
6位 タイ
7位 シンガポール
8位 ポルトガル
9位 スペイン
10位 マレーシア

成長性、安定性に加えて、将来の移住先、子弟の留学先としても考慮されていることから、英語圏の先進国が上位に並んでいます。

日本ではよくPRされているマレーシア投資ですが、華人はそれほど関心を引かれていないようです。(トップ10には入っているとも言えますが)

投資の世界では、「日本人とアラブ人がやって来たら、そのマーケットはそろそろ終わり」と言われているようです。自戒も込めて、気を付けないといけません。

今後も、中国での生活環境が大幅に改善されたり、資産が没収される政治的リスクなどが落ち着かない限り、富裕層の海外への資産逃避は当面続くでしょう。

中国の経済規模が拡大を続ける限り、外に流出する資金の規模も拡大が続きそうです。

華人に人気の投資先には、相当な金額が毎年流れ続けることになります。特に、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど、経済、人口の規模が大きくない国では、かなりのインパクトを与えます。

中国の最上位2%の富裕層の数と、オーストラリアの人口が、概ね同じです。

当該サイトの代表者がインタビューで答えたところによると、平均的な取引価格は約1.3億円で、7割の人が現金で購入しているようです。

価格帯から考えると、中国で海外投資を考えている人というのは、やはり富裕層です。サラリーマンでも海外不動産投資を検討することがある日本とはずいぶん違います。

現金買いが多いというのは、国内に資産を置きたくないということもあるでしょう。

本来なら現金を手元に残してローンを組んだ方が資金効率もよいでしょうが、それよりも資産を海外に振り分けることが優先しているようです。

華人富裕層の間では、子弟を欧米に留学させ、その滞在用と投資を兼ねて、不動産を購入するケースはよくあります。

2014/11/25

海外不動産の買ってはいけない物件
-専用の駐車場なし

専用駐車場なしの物件は、都心のステューディオ・タイプ(日本で言うワンルーム)や、場合によっては1LDKでも一部に見られます。

日本では、マンション内の駐車場は、管理組合から借りる(月々の駐車代金を負担する)のが通常と思います。

オーストラリアでは、駐車場の敷地自体は管理組合の所有となっていますが、部屋番号ごとに指定された駐車スペースの専用利用権が、部屋の区分所有権とセットになって売買されているのが通常です(月々の駐車代金はかかりません)。

専用駐車場なしの物件の場合、同じ間取りで専用駐車場付きの物件に比べて、数百万円程度は安く買えます。

一方で、家賃相場も、駐車場付に比べれば安くはなりますが、価格差ほど安くはならないため、結果的に家賃収入からの利回りが高めになる傾向があります。

当面のキャッシュフローの利回りで見れば、良さそうにも見えます。

もっとも、オーストラリアでは地下鉄などの鉄道網が、東京のようには発達していません。

都心に近い立地なら、車なしでも普段の生活は良いとしても、週末に友人宅やワイナリーに出かけたり、郊外の大きなモールに出かけるとなると、自家用車がないとかなり不便です。

立地と値段によっては諦める人もいますが、本当は専用の駐車場がほしいというのが本音です。

郊外では住宅地の路上に駐車するのは、オーストラリアでは標準的です。高校生以上になれば一人一台持っていますから、専用駐車場だけでは足りないという事情もあります。(路上駐車するのを前提に道路幅が決められています)

もっとも、都心に近いところでは、路上駐車できるスペースも限られ、近隣の住民がいつも確保できるとは限りません。

したがって、都心のマンションであっても、敷地内で地下駐車場などに少なくとも1台分は確保されているのが望ましいです。

駐車場の数は間取りとのバランスも必要で、2LDKまでであれば1台分でもよく、3LDKなら2台分は必要です。

逆に、1LDKで2台分のスペースがある場合、オマケならいいのですが、その分、値段が高いとなると、賃貸や転売時のターゲットが限定される可能性があります。

2LDKの場合は、専用駐車場は1台のみのケースが多いですが、郊外の物件であれば2台確保されている物件のほうがニーズがあるかもしれません。

都心のど真ん中など、職場へ歩いていけるような立地であれば、駐車場なしでも利便性で補えるでしょう。

それ以外の中途半端に便利な立地では、専用駐車場なしの物件は、転売でも、賃貸でもリスクがあります。

少なくとも、資金に余裕のある層は、こうした物件に住まないし、自宅用として買うこともありません。

よって、できるだけ安く住みたいという層が対象になるため、中長期的に、家賃が上がりにくく、資産価値も上がりにくい物件と言えます。

将来の物件売却の出口まで考えれば、駐車場なし物件は避けた方が無難です。

2014/11/21

海外不動産の買ってはいけない物件
-管理組合が機能していない

オーストラリアでは、物件購入にあたって弁護士(Solicitor:日本の弁護士と司法書士の中間的な資格)に契約書のチェックを依頼するのが通常です。日本のワンルームのような数百万円の安い買い物にはならないからということもあります。

(売り手には、売り手側のサイドに立って契約書を作る弁護士がいます。したがって、自分サイドに立って契約内容をチェックしてくれる弁護士を別途に雇う必要があります。「定型的な契約書ですから」というのを鵜呑みにするのは危険です)

これに合わせて、弁護士を通じ、管理組合の議事録を取り寄せます。直近のものだけでなく、できれば数回分を取り寄せることが推奨されています。
(日本では、ワンルームの区分を一つ買うくらいなら、ここまではやっていないのが通常でしょう。建物の状態や賃貸状況が良好で、修繕積立金がしっかり貯まっているなら良しとすることが多いのではないでしょうか)

管理組合がしっかり機能しているか、大規模修繕の予定があるか、建物の構造やオーナー間、入居者間などで問題がないかなどをチェックするためです。

オーストラリアでは、海外に居住している外国人投資家は新築物件しか購入できませんので、まだ管理組合の総会も開催されていないケースがほとんどでしょう。

もっとも、完成後に売れ残っていた物件を購入する場合であれば、既に総会が開催されているケースも考えられます。
新築だから何も問題がないとも言えませんので、諸々の点で不具合が出ていないかどうか、既存のオーナーから不満が持ち上がっていないか、チェックすることが可能です。

オーストラリアの都心に近い高層マンションでは、所有者が自分で住んでいる戸数よりも、投資家が貸し出している戸数のほうがかなり多いのが実際です。物件の管理や修繕などにオーナーがちゃんと目を光らせているか、業者の言いなりになっていないか、注意が必要です。

特に、外国人投資家に人気のエリアでは、自分で住んでいない多くのオーナーが、物件の維持管理に積極的に関与していないおそれがあります。

この点は日本のワンルームマンションのほうが顕著かもしれません。東京のワンルームでは、50戸くらいの規模のマンションで、オーナーが総会に参加するのは、2、3戸くらいです。
もちろん、郵送でも投票できるのですが、理事長に一任を選ぶオーナーが多くいれば、管理業者のいいようにされてしまうリスクがあります。

そもそも論になってしまいますが、地元のオーストラリア人が自分で購入し、自分で住んでいるようなエリア、物件タイプを狙うのが、管理組合の運営を考えれば安心ということになります。

同一のマンションの中で、持ち家と賃貸の割合が、少なくとも半分はほしいです。賃貸が7割を超えると、投資家の割合がかなり多い印象です。

なお、日本でも同様ですが、管理費、修繕積立金に関しては、新築当初はかなり少ない額に抑えられています。維持管理費をできるだけ少ないように見せて、心理的に買いやすくするためです。

負担金額の水準は、間取り、プール、エレベータなどの付帯施設にもよりますが、新築から数年のうちに、管理組合で維持管理費の増額が議論されることになります。

同等の中古物件の管理費くらいはいずれ請求されることになると、あらかじめ見込んでいなくてはいけません。

2014/11/14

海外不動産の買ってはいけない物件
-同じストリートでも他より劣る地点

人気の地区・通りの物件でも、周辺の物件よりも比較的安い、お買い得と思われるものには注意が必要です。安い物には安いなりの理由があります。

東京で不動産に投資をする場合は、都心3区、城南、城西といった大まかなエリアもさることながら、電車・地下鉄の線、駅が投資先を選ぶ基準になっています。

オーストラリアをはじめ、東京のように電車・地下鉄網の発達していない都市の場合、「〇〇線□□駅」を基準に地区を選定することはできません。

サバーブ(Suburb)と呼ばれる地区で大まかな絞りを掛け、さらにその地区の中で、どの通りに面した物件を狙うのかという話になります。

ただし、同じ通りにある物件でも、商業施設に近すぎる物件、交通量の多い道路に面している物件は敬遠されます。

数百メートル続く通りであれば、その中でも一等地、二等地が分かれますので、それに応じた価格帯を見極めなくてはいけません。販売価格の実績を参考にする場合も、この点を考慮する必要があります。

一見、安いなと思っても、本当はもっと安い値段でないと買うべきではない物件かもしれません。「人気の〇〇通りの物件でありながらお買い得」という宣伝文句だけに釣られないよう注意すべきです。

店舗に関しては、コンビニくらいなら便利でいいかもしれませんが、屋外に席があるような飲食店の場合は、夜遅くまで音楽や話し声、食器を片づける音がするなど、住環境に関しては望ましいとは言えません。

店舗や飲食店、スーパーなどが周辺に全くないエリアでは不便すぎますが、近すぎるのもマイナス評価です。(どの程度の騒がしさを許容するかは、文化圏によるかもしれません)

店舗や駅などが歩いて行ける距離にある一方で、住宅の周辺はできるだけ静かなエリアがベストです。

商業施設や幹線道路に近すぎるといった、マイナス部分を考慮した割引価格で取得するなら投資としてアリかもしれませんが、家賃額、売却価格の将来性を考えれば、避けるのが無難でしょう。

少なくとも、人気の地区だからと油断して、問題のない立地の物件と同じ価格帯で購入してしまうことは避けなくてはいけません。

同じストリートでも、どちら側に位置するかによって眺望や環境が異なり、同じ広さの物件でも値段が20%くらい違うことは珍しくありません。

近くの物件が4000万円で取引されているとして、その通りの向かい側の物件を3500万円で購入できたとしても必ずしも良い買い物とは言えません。

眺望や騒音を加味すれば、本当はもっと安い3000万円が妥当な値段だというケースもあります。

2014/11/13

外国人が買い占め、空室のまま放置される再開発地区-メルボルン

メルボルンのドックランズ地区(Docklands)は、もともと船着き場、倉庫街があったエリアです。
近年、地元政府主導で再開発が行われ、新しいマンション群や飲食施設などが建設されています。

図の中心がドックランズ地区。
トラムに乗れば市中心部への移動も便利だが…
地図出典:Google map 

従来は住宅地区とは認識されていなかったものの、市の中心部ほど近くに位置していることから、利便性の面でポテンシャルのある投資地区とされていました。

近年、およそ20階建てのマンションが建設されるたびに、特に中国系の投資家が先を争って購入していたようです。

モダンなマンションが増えていき、特に海外からの投資熱は高まっていたものの、新規供給が多すぎて空室率が高い、実際のキャピタルゲインがほとんどなかった、と不動産関連の各種メディアでは投資先としては疑問視されていた地区でもあります。

先日、筆者も現地に行ってみましたが、午後9時ごろで、マンション群の明かりは1/3も灯いていない状況でした。

ところで、不動産調査会社などが発表している地区ごとの空室率(vacancy rate)は、賃貸募集のデータを基礎にしているため、オーナーが敢えて空室のままにしている(テナントを募集していない)物件は空室率にカウントされていません。

Docklands地区の空室率は手元のデータでは5.7%となっています。しかし、地元の人の実感としては、誰も住んでいないという意味での空室率はこれよりもはるかに高かったようです。

もっとも、これまでこうした話はイメージ、噂話のレベルでしたが、ABCニュース(オーストラリアでのNHK)で、民間団体が実施した実態調査の結果が報じられました。

1年間を通じた水道の利用状況から、実質的な空室(空き家)を調査したというものです。
これによると、Docklands地区では、17%が完全に空室(水道の利用が年間でゼロ)、さらに10%がほとんど利用されていないことが判明しました。

これまでも外国人投資家が購入しても、貸し出していない部屋が多いというのはメディアでも報じられ、誰しもそういうイメージは持っていました。今回は、データで裏付けられた形です。

オーストラリア国外在住の外国人でも、新築物件に関しては制限なく購入できます。これは、人口の増加が続くオーストラリアにおいて、外国資金で新規に住宅を供給するための、オーストラリアなりの知恵です。

人口の伸び(年率1.5%程度)に住宅の新規供給が追い付かないとなると、低所得者用の住宅など、政府が税金を使って公営住宅を作り、運営しないといけません。

そこで、住宅供給、運営は民間に任せる、できれば海外の資金も活用するという発想で、外国人投資家に門戸を開放しているのです。

これは、不動産投資家は当然、家賃収入を得るために貸し出しをするだろうと、オーストラリア人の発想を基礎としています。(日本でも通常そうですが)

ところが、多くの中国系の投資家の発想は異なっていたようです。

中国でも地方部でマンションが林立するゴーストタウンがたくさんできているというニュースがあるように、オーストラリアでの投資行動に限らず、彼らの本国でも、購入しても誰も住んでいないようなマンションはたくさんあります。

中国系投資家にとっては、マンション投資は、金(ゴールド)の現物投資に似た感覚の人も多いようです。つまり、キャピタルゲイン、資産の保全、海外へ資産の分散が主な目的で、インカムには関心が薄いのです。

こうした発想の投資家が市場に影響力を持っているうちは、家賃収入の利回りが低下しても関係がないため、まだ値段が上がると判断すれば、どんどん買ってくるでしょう。

他人に貸すと傷んでしまって価値が下がると考える人もいれば、「いざ」というときのために、海外に自分が逃げ込める場所を確保しておきたい、いつでも行けるように空室のまま置いておきたい、という発想の人もいるのでしょう。

オーストラリアの住民に住宅を供給するために外国人投資家の力を借りるという発想は、今回の調査結果によるとあまり上手くいっていない部分もあるようです。全国的に報道されたことで、これから国会でも議論されるはずです。

また、実際に住んでいる人が少ないとなると、人口増加を見込んでの商業施設の開発も計画通りには進みません。街が便利になって、活気が出ることでさらに移り住んでくる人が増えるという好循環も起こらず、地区の開発計画全体が頓挫するリスクが高まります。

こうしたリスクは、途上国の大規模開発案件でも同様でしょう。

これからは、オーナーが住んでいない、貸し出しもされていないという物件には高い税金が課されるなど、政府が何らかの手を打つことも想定されます。

そうなると、これまで空き家のまま放置されていた物件が多い地区では、一気に賃貸募集が増え、家賃の値崩れが起こりそうです。

また、現行の制度では、オーストラリア国外在住の外国人は、中古物件を購入できません。つまり、外国人は自分が買った物件(売るときには中古となっている)を外国人には売れないということです。

外国人投資家が多い地区で買ってしまうと、いざ自分が売りたいというときに、買い手が見つかりにくいというリスクや、外国人投資家が資本を引き上げたときに一気に値崩れを起こすリスクが高いという点に注意が必要です。

リスク低減のためには、外国人投資家を対象に熱心に売り込みが行われてきた地区(既に値が吊り上っている地区)では買わないということです。

抜け目ない投資家としては、「既に2倍に上がった」というのは、「これから買っても値上がり余地は少ないかもしれない」、「値下がりリスクが高いかもしれない」といった読み替えが必要です。

2014/11/12

海外不動産の買ってはいけない物件-場違いな物件

周辺が低~中所得者向けの住宅が多い地区の場合、間取りの広い高級物件を買ってしまうと、貸すのも、売るのも大変です。

建物や設備が高級な割に、他の地区に比べて安く買えるということで、こうした地区の高級物件に手を出してしまうと後で苦労します。

日本と異なり、海外では地区によって所得水準から治安までガラリと変わります。

いくら建物の中は立派でも、周辺環境が似つかわしくなければ、高所得層が相応の家賃を払って住むことは期待できません。

一方、高所得層が徐々に移り住んできている地区(人気化している地区)で、間取りが狭いために手ごろな価格でとか、築古の物件が放置されているのを安く買えるということであれば、割安でそうした人気地区に住めるということで、それなりの需要は見込めるかもしれません。
(外国人投資家が中古物件を購入できるかは、国によって異なります)

もっとも、高級地区の中とはいえ2級物件となると、資金に余裕のある層が敢えて借りたり買ったりする物件ではないため、将来的な家賃の上昇、価格の上昇に関しては後れをとる可能性があります。

地元の情報が詳しくタイムリーに入ってくるわけではない海外投資家としては、あまり奇をてらわず、(現在および将来の)当該地区のイメージに見合った物件を取得すべきです。

地区住民の平均所得の傾向や世帯構成、街の雰囲気を見て、マンションか、タウンハウスか、庭付きの戸建てか、また、マンションを狙うとしてもどの間取りか、将来の需要予測が不可欠です。

「将来は街の人口が増えているはずだから大丈夫だろう」と漠然と考えるのは危険です。同じ街の中でも、地区によって賃貸状況、売買状況は大きく異なります。

どんな職業でどんな家族構成の人に貸すのか、売るのかまで想定して、本当にその値段で借りてくれるか、買ってくれるかを具体的にイメージしなくてはいけません。

オーストラリアの場合、国勢調査の統計で、地区ごとの平均所得、家族構成、住民の年齢構成などの推移が把握できます。

こうしたデータを活用し、将来の街の姿を推測しながら地区を選定することが大切です。

政府の「〇〇計画」で価値が上がるのに賭けるやり方もあるとは思いますが、私はそういう特別なことがなくても、自然に価値が上がっている地区を選びます。

本当に「〇〇計画」が実施され、完遂されたらボーナスになるくらいのスタンスです。

何もなかったところが開発されれば大儲けする可能性はあるかもしれませんが、他の競合を出し抜けるほどの情報やネットワークがなければ、海外で大勝負に出るのはリスクが高いのではないでしょうか。

もし投資するのなら、開発がとん挫するリスクを織り込んだ価格でということになるでしょう。開発が成功するのを前提にした価格での投資であれば、いずれにせよ旨みはありません。