2015/09/29

シドニー住宅投資の買い時を探る

次の買い時については、前回こちらの記事で価格水準の面から検討しました。今回は、「マーケットの熱気」の面から検討したいと思います。

以下は、シドニーのオークション成約率の推移です

Source: CoreLogic RP Data


2015年半ばにかけて、オークション成約率は90%近くに達していました。ほとんどどのような物件でも、売り手の希望価格を上回る買いが入る状況です。「今買わないと、二度と買えなくなる」という心理が支配していたと言えます。

その後、徐々に沈静化し、現在は70%ほどに低下しています。売れる物件と、そうでない物件の選別が始まっています。

過去2年間、一時的に成約率が70%まで低下し、そろそろシドニーの住宅ブームも終わりかと言われましたことが何度かありましたが(折れ線グラフで谷になっている時期)、その後、盛り返す動きが繰り返されました。

今回は、90%という歴史的水準に達した後で、そのまま低下を続けるのか、これまでのように盛り返すのか、注目を集めています。

なお、今回のブーム前、2010年から2012年にかけて、シドニーでのオークション成約率は50%程度で横ばいとなっていました。

過去の数値を参考とするなら、今後、成約率が低下を続け、1~2年の間、50%水準での推移が続く局面を迎えたとしたら、次の上昇局面の準備が整いつつある買い時と考えることができそうです。

もっとも、すぐにこの局面には到達しそうになく、これから数年はかかるかもしれません。

数年先になるかもしれないことを今お話ししている理由は、事前調査から実際の購入まで時間がかかるためです。

頭金の準備、ローンの事前審査、投資する地区、ストリートの選定(できれば事前の下見)などは一定の時間が必要です。仮に買い付けを入れたとしても、競合者もいますので、一発で購入できるとは限りません。

これまでのシドニー市況でも、これだという物件が売りに出ない、売りに出ても競合者に持っていかれる、という状況で、買いたくても買えない状況が1年以上続いている購入希望者の話は珍しくありません。そうして機会を逃している間に、価格は15%も値上がりしています。

「今が買い時だ」と誰もが思うようになってから情報を取り始めたのでは、出遅れる可能性があります。

豪在住の方は、今から行動を起こす必要はないかもしれませんが、特に海外から投資を考えている方の場合は、機会を捉えて、投資候補先のエリアを旅行がてら下見しておくのもよいと思います。

2015/09/23

次のシドニー住宅ブーム(バブル)に乗るために

このところ、大手の金融機関、投資銀行がシドニー住宅市場へ警鐘を鳴らす頻度が増えました。

適正な住宅価格に比べ、ゴールドマンサックス(米投資銀行)によると20%割高、バークレイズ銀行(英)によると14%割高とのことです。ソース記事(ブルームバーグ)はこちら

また、それとは別に、モルガンスタンレー(米投資銀行)もオーストラリアの不動産市場はピークに達したと表明しています。

「シドニー住宅市場はバブルだ」と言われることもありますが、ゴールドマンサックスの主張する20%程度の割高であれば、バブルとまでは言えないのではないでしょうか。

過去3年間で45%上昇というのは相当な伸びですが、2012年時点の価格が割安だったという要因もあります。現在はオーバーシュート(過熱)局面であろうと考えます。

いずれにせよ、投資家としては、今のシドニー市場にこれから参入するのは得策とは言えません。そこで、次に参入するならいつが適切か、以下のシナリオ(ソフトランディング)をもとに検討します。

- 2015年現在は適正価格より20%割高
- 2016年は上昇率が5%に鈍化
- 2017年、2018年は、年5%下落
- 2019年以降は横ばい
- 潜在的な「適正価格」は毎年4%上昇

「適正価格」については、物価上昇(インフレ)率2~3%、実質賃金伸び1.5%、人口増加2%(大都市圏)を考慮すれば、基本的に上昇が続くと想定されますが、少し弱めに年4%上昇として検討します。

過去数十年のデータでは、住宅市場全体を見ると、年平均7%で価格が上昇してきたようです。もっとも、直近では資源ブームによる好景気、その前は高金利(物価高)、共稼ぎ世帯の増加(世帯収入増)、ローン借り入れの増加という、住宅価格を押し上げる明確な要因がありました。

これから当面は低金利、資源価格の低迷、世帯収入や借り入れは微増ということで、年7%ペースでの上昇は続かない、せいぜい年5%程度が妥当との意見が大勢です。

なお、我々が実際に投資する際には、住民の所得が平均以上に伸びており、さらに人口増加による住宅価格の上昇圧力を受けやすい(新規供給が需要に追い付かない)地区を選定しています。

2012年のシドニー住宅の実勢市場価格を100とし、2015年の価格を145(45%上昇)として、上記のシナリオをあてはめたものが下表です。(筆者作成)


これをグラフ化したイメージは以下のとおりです。

この試算を前提とすると、今回のシドニー住宅ブームが始まった2012年は、適正価格より7%割安であったと言えます。

また、これから徐々に住宅価格が落ち着き、物価や賃金の上昇が概ね現状どおり続くと仮定すると、2019年には市場価格が適正価格を下回り、2020年には2012年当時と同じような状況となりそうです。

当面は東京の不動産市場の活況に乗っておき、オリンピック頃を契機に、シドニー不動産に乗り換えるという戦略も考えられます。

なお、今回のシドニー市場の上昇局面がさらに続き、本当にバブルと言える状況になった場合、あるいは物価、賃金の伸びが想定以上に低下した場合は、調整期間が長引き、割安感が出るまでの時期が後にずれると思われます。

過去の株や不動産バブルの研究によると、バブルが発生するためには何らかの「神話」が必要なようです。

「地価は絶対に下がらない」「IT革命」「新興国経済は先進国の停滞と切り離されている」など、価格が上がり続ける理屈を多くの専門家が提唱し、一般の人々もそれを確信するようになる必要があります。

少し前に大幅に下落した中国株も、「政府が下落を容認しないはず」と多くの人が信じていたようです。

こうした「神話」に当初は懐疑的だった人、投資に縁遠いタイプの人(最後の買い手)が、周りの知人も儲けていると聞き、ついに我慢できずに参入した時点が、バブルの最終局面です。

バブルの時期には、みな合理的な行動をしているつもりであり(投資していない人のほうがバカにされる)、さらなる価格上昇が行動の正しさを裏付けるため、それがバブルかどうかはバブル発生中には通常気づきません。
崩壊した後で、「あれはバブルであった」と初めて一般に認識されるようです。

昭和の株、不動産バブルのときは、価格が下がり始めた際も、「これは調整であって、すぐにまた上がりはじめる」と考えていた人も多かったと聞きます。

目下のシドニー住宅市場の場合、まだ価格は下がっていませんが、既に「バブルだ」「割高だ」と多方面から声があがっています。一般の住民、投資家も、このペースで価格が上がり続けると信じている人はほとんどいません。バブル相場の典型的な要素が欠けているようです。

なお、豪国内ではシドニー市況が割高であることは「常識」と言えますが、かく乱要因としては、人民元建て、米ドル建てで換算すると、そこまで割高になっていないことです。特に中国から大量の資金が流入すると、人口2400万人に過ぎないオーストラリアには相当な影響を与えます。

豪金融当局も不動産投資向けローンの増加に歯止めをかけるよう指導しており、少なくとも国内要因では、過熱感は収まりつつあります。
もっとも、貸出総量の増加速度を緩やかにするという趣旨であって、前年比で減少させるという趣旨の指導ではないため、相場のクラッシュにつながるとは考えられていません。

なお、シドニー、メルボルンの不動産市場が沈静化すれば、豪中央銀行は心置きなく追加利下げができると言われています。為替を扱われている方は、この点も留意すべきと思います。

今回は本当のバブルには至らず、ブームのレベルで幕を閉じそうです。現在は資源価格も低迷しており、オーストラリア経済がどこまでも成長するといった「神話」を描くには至りませんでした。

もっとも、次回のシドニー住宅ブームと、資源価格上昇のタイミングが重なった時、正真正銘の住宅バブルが発生するかもしれません。ただ、資源価格が要因となる場合、2000年代半ば頃の実績から考えると、ブリスベン、パースのほうが爆発力がありそうです。

2015/09/19

オーストラリア地元投資家の動きも参考に

日経新聞記事によると、日本で投資用不動産を所有しているのは320万人。一方、オーストラリアでは180万人です(税務統計)。オーストラリア人口は日本の1/5であることを考えると、オーストラリアでは不動産投資がかなり活発と言えます。

また、自宅として使用の場合も、多くの人は資産価値(将来の売却価格)を強く意識しています。実需層も実質的には投資家の視点で自宅を購入していると言えますが、これはオーストラリアの年金制度が自己責任の割合が大きいこと(確定拠出型)が要因と考えられます。

また、これは家庭によるところもありますが、子供のころから親と「モノポリー」という不動産取引ゲームで遊んだり、18歳の誕生日には「これからは自分で資産を築いていくんだぞ」という意味合いで株やファンドを贈られたりすることも珍しくありません。(アングロサクソンの文化でしょうか)

子供のころから投資ゲームに親しんだり、若い時から投資に向き合っている人は日本よりも多いようです。なお、我が家にある「モノポリー」の対象年齢には、8歳~成人と書いてあります。

ご自身が物件の購入を検討している場合、他の購入希望者(地元の人)がどのようなタイプかに目を配るのも参考になると思います。抜け目のなさそうな投資家タイプか、業者に言いくるめられそうな経験の浅いタイプか、などです。

また、地元の華人ネットワークを持っているような中国系の富裕層投資家の動向はどうでしょうか。ただし、購入の目的が違う場合もあるので、あくまでもトレンドの参考としてです。

経験ある地元投資家なら寄り付かないような案件を避けるだけでも、大やけどする可能性を下げることができます。

なお、仲介業者や販売業者が提示する「想定家賃」は参考にはなりますが、実勢相場より510%高めであることは、お約束のようなものです。詳しく聞けば、「家具付きで貸せば、それくらいの家賃が取れる可能性はある」と答えるかもしれません。

我々も内覧の際に想定家賃を尋ねますが、それはそのエージェントの「誠実さ」や「その地区の特性を理解しているか」を計るバロメーターとして聞いています。

各エージェントは数多くの案件を担当していますので、必ずしもその地区の、そのストリートの特性に詳しいとは限りません。

一方、あるベテランのエージェントは、自身もその近くに住んでいたことがあったそうですが、物件の周辺事情にも詳しく、「近隣のこの家とあの家は歴史建造物に指定されているので、取り壊されてマンションに変わることはない(新規供給が限られている)」など教えてくれたこともあります。

想定家賃については、大手のサイトで実際の相場を自分で確認するのがベストです。郊外の新興住宅地でまだ実績がない場合は、周辺のより便利な(都心に近い)エリアの相場を調べ、そこから少し割り引けば、参考になるでしょう。
より便利なエリアと同水準の想定家賃を提示しているようなら、ちょっと膨らませているということが分かります。

もっとも、少し膨らませるのは業界のお約束なので、悪徳業者だとまでは言えません。家賃水準にせよ、その地区の将来性にせよ、相手の言うことを少し割り引いて検討する、自分でも裏を取ることが大切です。

2015/09/17

オーストラリア主要都市の空室率

投資の是非を検討する際、「オーストラリアの空室率」を指標としても意味がありません。
以下のように、都市によって大幅に異なるためです。
Source: petewargent.blogspot.com

また、以下は各都市の家賃水準の変化を示しています。右端が過去12か月間の変化率です(上段が戸建て、下段がマンション)。

Source: SQM Research

資源(鉄鉱石)産業の拠点であるパースは、地域経済の低迷が、空室率(3.7%)、家賃水準(戸建て8%減、マンション5%減)にも顕著に表れるようになりました。

一方、シドニーでは、空室率1.7%、家賃上昇率(年間)は約2%と底堅く推移しています。

ホバート(タスマニア)は大きな産業はありませんが、住宅のひっ迫(空室率1%)で家賃も年78%上昇しています。

ブリスベンの家賃は若干のプラスですが、物価上昇率には追い付いていません。実質的にはマイナス圏と言えます。

家賃水準は都市によってかなり異なりますが、ブリスベン-シドニー-メルボルン間はそれぞれ約900㎞あり、「他の都市のほうが空室が多くて、家賃も安いから移住しようか」とは簡単にはなりません。

オーストラリア内での人の移動は、地域の景気、仕事があるかに左右されます。この点は、大都市、特に東京に人が集まり続ける日本でも同様かと思います。 

また、一つの都市の中でも、空室率、家賃水準は地区によって異なります。この点は、東京でも、港区、練馬区、多摩市のマーケットを同列で扱うことができないのと同様です。

「次に大幅に価格が上がるのはブリスベンだ」と言われ始めて2年が経過しますが、いまだにパッとしないのは、地域経済が力強さを欠くためと言われています。
景気が悪いということはありませんが、他の地域から人を引き付けるほどの新しい仕事(職)が生まれていません。人口の伸びも直近では鈍化傾向です(これは、移民の流入減のため、オーストラリア全体の傾向でもあります)。

2、3年先までの今回の上昇サイクルでは、シドニー、メルボルンとの価格差を少し埋める程度の上昇に留まりそうです。中国本土でブリスベン投資ブームでも生まれれば別ですが。

おそらく、次のブリスベンの不動産ブーム(年10%超の上昇が続く状況)は、原油価格が6080ドルで安定し、いずれ100ドルに戻るなどと言われるようになったころでしょう。
そうなると、シドニー、メルボルンより大幅に住宅が安い上に、地域経済も強い、移住者も増えているということで、爆発的に値段が上がる可能性があります。
ブリスベン経済は資源に依存しているわけではありませんが、州北部で産出される天然ガス、石炭も主要な産業です。

もっとも、ブリスベン全域に及ぶほどの好景気(資源ブーム、不動産ブーム)になることは、当面は見込まれていませんので、現時点で参入するなら、需要と供給のバランスで需要のほうが多いエリアに投資するのが手堅いと考えます。

ブームになれば、以前は見向きもされていなかった割安な地区のほうが、高い値上がり率を示すこともあるでしょう。
ただし、そこに至るまでには、まず都心に近いエリアで住宅価格が高騰し、都心周辺では手が出ない人が増え、周縁部に目を向ける人が増える必要がありますが、ブリスベンの場合、その状況になるまでには相当な年数を要します。

我々がシドニーを見るときは、将来のシドニー人口が900万人になったとき、今のロンドンや東京で言えばどんなエリアに該当するかを考えます。
同様にブリスベンでの投資先を検討する際には、現在のシドニーで言えばどんなエリアに該当するかです。
ただし、現在の人口増加率(年1.52%)を前提とすると、そうした大都市と同規模の人口になるまでに、約40年かかることも考慮しなければいけません。

自分が購入した物件を20年後に売却するとして、将来の買い手も、その先の10年、20年の将来性を考えて購入の是非や価格水準を検討するはずです。自身が想定している保有期間の2倍くらいの期間は、ファンダメンタルズ面をチェックしておく必要があろうかと思います。

2015/09/15

シドニー住宅市場の熱さの度合い

豪不動産マーケットの「熱さ」の尺度となるオークション成約率をみると、シドニー住宅市場の鎮静化の兆しが表れています。
以下はシドニーの地域別のオークション成約率です。今年6月から8月までの推移から、全体として熱が冷めている様子が見てとれます。


 特に、シドニー西部(West)、南西部(South West)での成約率が大幅に低下しています。これらの地域は都心からも距離があり、昔から低所得層が多いとされるエリアで、(当該エリアとしては相当な価格まで上がってしまい)割安な物件を狙う域外からの投資家の熱が冷め始めたこと、金融機関が投資用ローンを絞り始めたことが、オークション成約率低下の要因と分析されています。言い換えると、地元の実需層だけでは買い支えることができないマーケットだと言えます。

オークションで住宅を売却する場合、売り手が事前に設定した最低落札額を超えた場合のみ、オークションでの落札に至ります。(いわゆる競り売り)

需要の強いマーケットでは、複数の買い手が競って値を吊り上げ、最低落札額を大幅に上回る価格で落札されることがあります。
一方で、売り手が強気の額を設定したものの、買い手側がそこまで払いたくないという市況では、オークション成約率が低下します。

なお、オークションで成約に至らなかった場合、売り手は別の期日に再度オークションを実施するか、当日に最も高い値を提示した買い手候補者と個別に交渉することとなります。

概ね、成約率が80%を超えるとかなり需要が強い市況(売り手優位)、70%でも売り手にとって良好な市況、5060%で需給バランスの取れた市況と言われています。
ただし、伝統的に、シドニー、メルボルンでは高め、ブリスベンでは低めであることが通常です。シドニーで60%というのは弱い数字ですが、ブリスベンで60%なら悪くない数字です。

シドニーでは一時期、90%に達していたこともありました。オークションに出るのは優良物件ばかりとは限りませんから、成約率90%というのは、ほとんど何でも買われているような状況です。

今回のシドニーブームは、都心に近いエリア(特にInner West)が上昇を牽引し、徐々に割安と思われる周辺地域へ価格上昇の波が広がっていきました。西部、南西部の需要の弱さを考えると、価格が下がり始めるのは、上昇局面とは逆に、これら周辺地域が最初となりそうです。

一方、歴史的に裕福な層に好まれるLower North、近年若い年齢層(なかでも金融関係、弁護士、会計士などの専門職タイプ)の人気が急上昇したInner Westでは高い成約率を保っています。これらの地域では、底堅い需要が見込める点で投資家の人気も高く、また、実需層も十分な購買力を持っています。

以上は、近年、東京でも都心に近いほど地価やマンション価格が上昇している状況と似ています。東京のマーケットが下落局面に入った時、都心は価格調整があっても下支えされそうですが、周辺地区では近年の上昇分を完全に打ち消す下落になるかもしれません。

確かに、周辺地域でも価値が見直され、住宅価格が大幅に伸びることはあります。東京でも、利便性が大幅に改善された武蔵小杉の例があります。

もっとも、投資としてこれを狙うのはなかなか難しいです。公的機関や企業が新たな路線、駅の構想を発表したところで、本当に実現するか、いつ実現するか保証はありません。

ブリスベンでも、州政府の政権交代を機に、大規模な地下トンネル(バス・地下鉄)計画が白紙撤回されました。この計画を見込んで投資していた人がいたとしたら、大きな痛手です。

また、将来のプロジェクトの完成に賭ける場合、住宅価格が上がってしまう前に(利便性の向上が誰の目にも明らかになる前に)参入する必要もあります。

大規模プロジェクトの成功に賭けるという投資手法を、政治リスクも含めた「土地勘」のない海外でやるのは非常にリスクが高いのではないでしょうか。
「土地勘」のある人であれば、政治や企業の動向など、雲行きが怪しくなった時点で早めに撤退するなど、軌道修正もできると思いますが、通常、海外からの不動差投資では、買ったままになるケースが多いはずです。

政府が特段のプロジェクトを実施しなくても、自然に人々が集まり、追加料金を支払ってでもそこに住みたいと思わせるエリア、企業が自主的にオフィスや店舗、住宅の開発に資金を投じているエリアのほうが、投資先として安定感が高いと言えます。

現状のシドニーで言うと、Inner WestLower Northなどの地域ということになります。

2015/09/14

オーストラリアでの不動産投資戦略

いつ何に投資すべきかは、投資目的、資産背景によって異なりますが、現在の市況に照らして、一般的にこうではないかと思われる見解を共有したいと思います。

実需層
オーストラリア在住で、いずれにせよ住む場所が必要という場合です。

シドニー、メルボルン、ブリスベンで、自分の住んでいる(住みたい)地区で手ごろな物件が売りに出れば、買ってもよいと考えます。ただし、絶好の買い時という時期でもありませんから、決して無理をせず、ちょうど買いたいと思っていたような物件が売りに出され、競合も少ないようであればです。

世界恐慌のような事態を想定するなら別ですが、多少の景気減速くらいでは、家賃も価格もほとんど下がらないと想定されています。むしろ、既に相当な上昇を見せたシドニー、メルボルンですら、物価上昇率(23%)程度はしばらく上がり続ける可能性も指摘されています。

2008年から2010年にかけての、サブ・プライムローン問題、リーマンショックのあった時期でも、シドニーの不動産価格は数%程度しか下落していません。

実需層の場合、住宅を購入しなかったとしても、いずれにせよ家賃を支払う必要があります。資金を用意できるなら、今のうちに購入も検討すべきと考えます。

また、現在、オーストラリアとしては歴史的な低金利です。さらに、ひと月ほど前から、ローン金利と頭金の割合に関して、投資家よりも自宅購入者が優遇されています

銀行の融資姿勢は予告なく、急に変わることもあります。景気の停滞で住宅価格の下落に賭ける(その時まで待つ)としても、その経済情勢では銀行も新規融資をかなり絞るはずで、ローンを組むのが難しくなっているかもしれません。
いつかは自宅を購入したいという実需層の場合は、住宅ローンの面からも、買えるうちに買っておいた方がよいと言えます。

賃貸のほうが目先の支出は少ないかもしれませんが、物価上昇、人口増が続くと見込まれるオーストラリアでは、いずれ家賃も上昇する可能性が非常に高いです。

ところで、手持ち資金がある場合、不動産ではなく、株など他の資産に投じることも考えられます。どちらが得意かという側面もありますが、一般的には不動産のほうが(比較的安心して)レバレッジを利かせやすく、価格の変動も緩やかなため、資産形成の土台として向いていると思います。

シドニー、メルボルン、特に割安なブリスベンでは、自宅購入を検討すべきでしょう。パースは資源価格によって景気や住宅需要が左右されるのと、それ以外の小規模な都市では、人口、経済成長の面で不透明な面もあり、将来の資産価値が少々心配です。

老後の年金も自己責任の部分が大きいオーストラリアでは、自宅購入の場合でも、将来の資産性を考えることが大切だと思います。
十分な資産価値があれば、リタイアの際に売却し、コンパクトなマンションに住み替えて、余った資金は生活費に充てるといった選択肢も増えます。老後は日本でという場合も、終の棲家を購入する資金に充てることができます。

そこで、シドニー、メルボルン、ブリスベン以外の地方都市に在住の場合は、自宅は賃貸を続けながら、前記三大都市に投資物件を購入するのも選択肢です。

ただし、シドニー、メルボルンの好立地では、市場はまだ加熱状態が続いています。オークションなどで、採算度外視(海外への資産逃避を優先)の購入者につられて、必要以上の高値を支払わないよう注意が必要です。

シドニー、メルボルンで自宅購入が現時点で難しい場合、割安なブリスベンで投資物件を購入し、ひとまず不動産マーケットに参入する足掛かりとするのも選択肢でしょう。

オーストラリアの若者の間でも、自宅購入前に、投資物件を購入するケースが増えているようです。特にシドニー、メルボルンでは都心近くの物件価格が高騰し、若い人にはとても手が出ない水準です。都心近くに賃貸で住みながら、手ごろな価格で購入できる郊外に投資物件を購入するケースをよく耳にするようになりました。

都心近くに住みたいが、高くて買えない。賃貸なら何とか払える。一方で、不動産ブームには乗りたい。自分自身は郊外に住みたいわけではないが、投資用として買っておこう、という発想です。

東京では1520㎡くらいのワンルームもあり、都心マーケットへの参入もそこまで難しくないですが、オーストラリアでは最低でも40㎡以上といったサイズですから、若い人にとっては都心への参入は難しいのが実際です。

逆に、子育て世帯で都心から離れた郊外の戸建てに賃貸で住んでいるが、当該地区の住宅価格の上昇に確信が持てない、それでも自宅を購入すべきかというケースも考えられます。
その場合、戸建ての賃貸を続けながら、都心近くのマンションを投資用として購入するのも選択肢です。(ただし、オーストラリアでは賃借人保護が弱いので、この点は自宅を購入する場合と比べて注意が必要です)

なお、永住者等の場合は中古物件も購入できるため選択肢が広がりますが、Off-the-planや新築に関しては、ブリスベンでも目下の市況で売り手が強気の値段を付けており、慎重な検討が必要です。

投資家-資産形成目的
投資として利益を上げること、資産を築くことが優先の場合です。

オーストラリアの不動産投資(住宅系)は、基本的にキャピタルゲイン狙いです。中長期の価格上昇や家賃上昇が織り込まれているため、当初の家賃収入利回りは低め(表面利回り4~5%)です。

初めからそれを大幅に超える利回りがある場合は、当初期間だけの家賃保証、地方の小規模都市、敷地に別棟を建て増ししているような特殊な物件になるでしょう。将来の家賃、価格の伸び悩みリスクを織り込んだ利回りと言えます。

キャッシュフローよりもキャピタルゲインというタイプの投資では、自己資金の割合しだいで当面、持ち出しが発生することも珍しくありませんが、キャピタルゲイン(含み益)は最終的に売却するまで課税されないという利点があります。
給与収入などがかなり多く、所得税率の高い方の場合は、キャピタルゲイン型のほうが有利とされています。
なお、海外投資家の場合、8万ドルまでは32.5%の税率で所得税が課税されます。賃貸経営に直接かかるコストや減価償却は差し引くことができますが、海外在住者には「基礎控除」はありません。

保有期間に関しては、今回のシドニー相場のように、運よくピンポイントで底値を拾い、天井で売り抜けたとしても、最低3年のスパンで投資する必要があります。通常は、底値、天井の時期は事前には分かりませんので、少なくとも不動産相場のひとサイクル、7~10年は保有する必要があります。

短期保有で10%、20%程度の値上がりで売却してしまうと、売買のコスト、譲渡所得税も考慮すれば、効果的な資産形成とはなりません。

また、オーストラリアの不動産に投資する利点は、中長期的な人口増、物価上昇、実質所得増にあります。できるだけ長いスパンで保有したほうが、ファンダメンタルに沿った結果が出やすいと考えます。

今、資金を投じたいという場合は、今回の上昇サイクルでまだ上昇余地のあるブリスベンがお勧めです。これは私個人の見解というよりも、大方の業界専門家の見解です。

やはり代表的な都市であるシドニー、メルボルンを狙いたいという場合、今回のサイクルではほぼピークに達しています。上昇余地が限られている一方で、価格下落のリスクもあります。

また、一旦保有してしまうと、維持管理やテナント仲介に係るコスト(一年あたり、物件価格の1.5%目安)、ローンを組む場合は金利の負担も発生します。これらは、物件の価値が上昇しようが、下落しようが負担し続けなくてはいけません。

したがって、特にローンを組む場合、シドニー、メルボルンの物件が投資対象であれば、我々なら今の時期は見送ります。マーケットが落ち着き、物件価格が調整され、物価や賃金、家賃の水準が追い付いてきた時点で、参入を検討します。
今のところ、2019年~2020年頃と考えていますが、中央銀行の金利政策、銀行の融資姿勢、景気動向によって前後しそうです。

一方、大方の予測に反して、シドニー、メルボルンの相場が堅調に上昇を続けた場合、機会を逃すこととなります。この点は、各投資家のリスク許容度しだいでしょうか。我々の場合、実需ではなく投資としては、そこまでリスクを取りたくない(収益の機会を逸しても仕方がない)というスタンスです。

投資家-海外への資産分散目的
利益を上げることよりも、リスク分散、資産保全が優先の場合です。

中国の富裕層では、これに加えて、将来移住するための足掛かりと考えている人が多いと言われています。(オーストラリアで不動産を所有していても、それだけで永住権を取得できるわけではありませんが。ただし、数億円単位の投資ができる富裕層には、投資家ビザ制度があります)

こうした投資家層の場合、一千万円、二千万円くらい割高でも、大した違いはないという感覚でしょう。現在、割高と言われていますが、中長期的に見て底堅いシドニー、メルボルンへの投資が続いても不思議ではありません。為替も考慮すれば、本国の不動産相場と比べて、むしろシドニーのほうが割安かもしれません。

これまで中国に関しては、人民元高(豪ドル安)のため、相対的にオーストラリアの不動産が割安となり、大量の資金が流入していると言われてきました。一方、昨今の人民元の切り下げ、さらには一層の切り下げの思惑で、買うなら今のうちとオーストラリアへの資金流入がむしろ加速するのではとの観測も聞かれます。

早い時期に海外へ資産を分散したい、目先の損得は度外視して、中長期での資産保全を優先という場合は、人口の増加、多様な産業の面で底堅いシドニー、メルボルンがお勧めです。

現在、シドニー、メルボルンの不動産相場は過熱していると言われますが、待っていれば下がるとも限りません。仮にシドニー、メルボルンの不動産価格が下がったとしても、そのとき自国の通貨や資産の価値が目減りしていれば元も子もありません。

メルボルンは自動車産業など、ものづくり系の企業が拠点を置く都市として発展してきました。一方、シドニーは金融、保険、会計・法律などの企業の多くが拠点を置いています。中央銀行、証券取引所の本部所在地もシドニーです。

近年、自動車工場の撤退が相次いでいますが、人件費の高いオーストラリアでは、豪ドル相場がよほど低下しないかぎり、製造業系は苦戦を強いられそうです。

一方で、英語、イギリスの流れを汲む法体系・商慣習といったプラットフォームの強みを活かしやすい金融、会計・法律に関わる産業を擁するシドニーのほうが、アジア・オセアニア地域の拠点として繁栄が続く可能性が高いとみています。

なお、今後数年のスパンでは、ブリスベンが最も有望視されており、中国からの投資家の注目を集め始めているようです。ただし、ブリスベンの人口規模は、シドニー、メルボルンの半分程度です。マーケットの規模が違いますので、投資先の地区を選ぶ際にも注意が必要です。

都心から10kmという立地の場合、シドニーなら都心に近いという印象ですが、ブリスベンではちょっと離れた郊外という印象です。

資産の保全を目的とするなら、ブリスベンのみに集中投資するというよりは、シドニー、メルボルンでも物件を保有しながら、ブリスベンにも分散投資というのが妥当だろうと思います。

2015/09/10

プレ・ビルド(完成前販売)の新たな問題点

最近、シドニーで問題となったケースを共有したいと思います。

ある投資家は2012年にシドニー郊外で戸建ての購入契約を結びました。ディベロパーが土地を造成し、十数戸の戸建てを建築して分譲、2015年に残金支払い・引き渡し予定というものです。

契約金額は、2012年当時の相場を反映したものです。その後、2015年までに、シドニーでは平均住宅価格が40%も値上がりしました。

2012年の契約時の価格が5000万円とすれば、現在の価値は7000万円ということです。

投資家としては、価値の上がった住宅を割安の価格で購入でき、投資として大成功となるはずでした。

一方、ディベロパーとしては、面白くありません。今、改めて売りに出せば7000万円で売れるにもかかわらず、2012年に結んだ契約のせいで5000万円しか受け取ることができません。

そこで、ディベロパーのほうから契約を解除するケースが散見されると報じられています。

プレ・ビルド(オーストラリアではoff-the-plan)販売の場合、通常、契約にサン・セット(日没)条項が盛り込まれています。これは、特定の期日までに完成させることが不可能となった場合、ディベロパー側からも契約を解除できるという条項です。

もちろん、ディベロパー側には期日までに完成させる義務はありますが、努力義務に留まります。役所の審査が長引いた、建築ブームで人手や資材を確保できなかったなど、ディベロパー側も止むを得なかったと主張していますが、真相は分かりません。

「わざと完成を遅らせたのではないか」と裁判に持ち込むことも考えられますが、時間も経費もかかります。他の購入者の意向を取りまとめるのも容易ではありません。

手付金(通常、価格の1割)を返却してもらって、あきらめるしかないのがほとんどのケースでしょう。

プレ・ビルドで購入する場合、ディベロパーの信用、実績が大切です。どの企業にもスタート・アップの時期はあり、全ての新興ディベロパーがダメだとは言えませんが、不動産ブームに乗って急速に規模を拡大している新興ディベロパーは見極めに注意が必要です。日本でも、2005年に耐震強度偽装事件がありました。

完成前に販売価格が決まっているとすれば、ディベロパー側の利益をさらに増やすためには、建築コストを削るほかありません。

購入者側は、良質な物件を、できるだけ安く買いたいと考えます。一方、ディベロパー側は、できるだけコストは低く、販売価格は高くと考えます。利害が相反することを前提に、交渉、契約に臨む必要があります。

契約書には、止むを得ない事情がある場合、内装はもとより、占有面積の広さまで変更できる条項が盛り込まれているケースが多いようです。当然ながら、変更がある場合は、より低いグレードに、より狭い面積へとなります。変更権限をディベロパー側が握っている以上、その逆はありません。

専有面積が当初計画より10%狭くなることを許容する条項もあると聞きます。シドニーでは、平米単価100万円程度も珍しくありませんから、50㎡のつもりが45㎡の物件を引き渡されたのでは、500万円も価値が目減りしています。

当初は敷地いっぱいに建物を建築する計画だったが、役所から修正を言い渡され、計画通りの総戸数を建築するためには、戸当たりの面積を小さくするほかない、というケースもありえます。

もっとも、こうした可能性が契約書に明記され、購入者がそれにサインした以上は、後でどうすることもできません。

したがって、こうした計画変更(設計ミス)が起きる可能性が低く、仮に計画が変更されたとしても誠意を持って対応してもらえると考えられる、実績あるディベロパーを選ぶことが大事です。

オーストラリアでは、建築許可の履歴が市役所のウェブサイトで公開されています。これを見ても、当初の計画通りに完成ということは通常ありません。何か月も、時には何年にもわたって、計画の提出、役所の審査、計画の修正が重ねられています。

こうしたリスクを避けたい場合は、既に完成した新築物件を、(自分が雇った)建物診断士の検査のうえで購入することもできます。

既に完成した物件の場合、眺望の良い部屋などは既に売り切れているかもしれません。しかし、自分が住むわけでなく、あくまで投資として考えるなら、賃貸に出した時の想定家賃と購入価格の見合いで、十分検討に値する物件もあるはずです。

もっとも、同一建物の他物件と比べて、明らかなマイナスポイント(ごみ置き場、駐車場出入り口のすぐ近くなど)がある物件は、割安でも避けるのが無難です。

(購入時の値段も相応に高いはずですので)必ずしも最上階、角部屋でなくても良いと思いますが、少なくとも、可もなく不可もなくの水準に留めないと、将来のテナント、売却先の層が限定されてしまいます。

「総じてクオリティは低いが、値段が安ければ買ってもよい」と自分が考えたなら、将来の買い手、借り手も同様に考える可能性が高いです。内装は後で変更できますが、立地、位置取りは変えることができません。

現在のシドニーのように不動産ブームの時期は、売れ残り物件も減少します。理想的には、人々の関心が不動産投資から離れた時期に、たくさんの売れ残り物件の中から、自分に最も有利なものを選ぶことができる時期に参入するのがベストです。



完成前に買わないと売り切れるという市況のときもありますが、大勢の人が不動産購入に殺到している段階で参入するのがそもそも投資として得策か疑義があります。

2015/09/04

シドニー不動産の買い時はいつか

キャピタルゲイン狙いを前提とするなら、シドニーでの次の買い時は、2019~2020年頃と考えています。

2016年まで上昇継続(ペースは鈍化)、2017~2018年は横ばい(やや下落)、2019~2020年に反転(底打ち)の兆し、という経過の想定です。

丁度良いタイミングで、目当てのエリアで、いい物件が売りに出るとも限りませんので、底値をピンポイントで買うのは非常に困難です。

一方で、金利の支払い、保有コストを考えると、ピーク期や、回復前のあまり早い時期に参入するのは避けたいものです。キャピタルゲイン狙いの物件の場合(一般に、家賃収入の利回りは低い)、頭金2割程度であれば、毎月の持ち出しが発生します。

1、2年は価格が動かなくても仕方がありません。しかし、毎月の持ち出しが発生する一方で、5年間、思ったように価格が上がらない、むしろ下がっている、という状況では、いくら中長期投資とはいえ、精神的にも、金銭的にも持ちこたえるのが難しくなります。

この点で、最初から収支が黒字のキャッシュフロー型の不動産投資とは異なる考慮が必要です。

もっとも、中国の通貨切り下げで、中国からの資金逃避が起きているとも言われています。こうした資金は、儲かるかどうかよりも、とにかく安全なところに移したいという動機のほうが大きいため、オーストラリアへの流入が一層加速する可能性があります。

この場合、シドニー不動産の上昇局面が想定より長引くかもしれません。既に、2014年ピーク説、2015年ピーク説と、多くの専門家の予想も裏切られ続けています。我々も、以前は2018年頃が次の買い時(底値圏)と想定していましたが、少し後ずれさせました。

過去3年間の上昇率(約40%)、鈍い平均所得の伸びを考えると、わずか2、3年の調整期間で、また価格が大きく上昇するとは考えられません。今回のピークを打った後、物価や賃金、家賃の上昇が追い付くまで、少なくとも数年はかかりそうです。(前回サイクルでは、2002~2008年まで横ばいが続いたようです)

直近数週間では、シドニーのオークション売却成功率は、以前の80%から70%水準へと低下しており、沈静化の兆しが見られます。現在の価格水準では買いたくないという人が徐々に増えているということです。

そして、9月(春)を迎え、クリスマス休暇まで、伝統的に売買の活発な時期を迎えました。大量の売り物件を吸収するほどの需要があるのか、注目されています。

一方、ブリスベンでは、以前は40~50%に低迷していた同率が、60%前後で推移しており、ようやく市場が温まってきたと実感しています。

近隣でも、ここ数か月、「物件を売りませんか」「価格を査定します」という投げ込みチラシがかなり増えました。仲介業者も、売り物件の在庫が不足しはじめたようです。以前は「買いませんか」のチラシしかもらったことはなかったのですが。

シドニーの高騰を受けて、国内外の投資家が、上昇余力のあるブリスベンに資金を投じはじめたとのニュースも報じられています。過去2年間、継続して報じられていた「シドニー市場がピークを迎え、投資資金がブリスベンに向かう」というシナリオもずいぶん後にずれました。ついにこのシナリオが実現するのでしょうか。

我々がターゲットとするエリアで調査した限りですが、一等地(超一等地ではない)のマンション価格を比べると、平米単価でシドニー1万ドル、ブリスベン5千ドル程度と約2倍の開きです。

都市全体の平均的なマンション価格(実際に取引された価格の中央値)で見ても、シドニー68万ドル、ブリスベン37万ドルと相当な格差です。

平均的な世帯所得で見ると、シドニーのほうが5%高いですが(2011年国勢調査)、所得差では説明できないほどに住宅価格の差が生まれています。