投資の是非を検討する際、「オーストラリアの空室率」を指標としても意味がありません。
以下のように、都市によって大幅に異なるためです。
Source: petewargent.blogspot.com
また、以下は各都市の家賃水準の変化を示しています。右端が過去12か月間の変化率です(上段が戸建て、下段がマンション)。
Source: SQM Research
資源(鉄鉱石)産業の拠点であるパースは、地域経済の低迷が、空室率(3.7%)、家賃水準(戸建て8%減、マンション5%減)にも顕著に表れるようになりました。
一方、シドニーでは、空室率1.7%、家賃上昇率(年間)は約2%と底堅く推移しています。
ホバート(タスマニア)は大きな産業はありませんが、住宅のひっ迫(空室率1%)で家賃も年7~8%上昇しています。
ブリスベンの家賃は若干のプラスですが、物価上昇率には追い付いていません。実質的にはマイナス圏と言えます。
家賃水準は都市によってかなり異なりますが、ブリスベン-シドニー-メルボルン間はそれぞれ約900㎞あり、「他の都市のほうが空室が多くて、家賃も安いから移住しようか」とは簡単にはなりません。
オーストラリア内での人の移動は、地域の景気、仕事があるかに左右されます。この点は、大都市、特に東京に人が集まり続ける日本でも同様かと思います。
また、一つの都市の中でも、空室率、家賃水準は地区によって異なります。この点は、東京でも、港区、練馬区、多摩市のマーケットを同列で扱うことができないのと同様です。
「次に大幅に価格が上がるのはブリスベンだ」と言われ始めて2年が経過しますが、いまだにパッとしないのは、地域経済が力強さを欠くためと言われています。
景気が悪いということはありませんが、他の地域から人を引き付けるほどの新しい仕事(職)が生まれていません。人口の伸びも直近では鈍化傾向です(これは、移民の流入減のため、オーストラリア全体の傾向でもあります)。
2、3年先までの今回の上昇サイクルでは、シドニー、メルボルンとの価格差を少し埋める程度の上昇に留まりそうです。中国本土でブリスベン投資ブームでも生まれれば別ですが。
おそらく、次のブリスベンの不動産ブーム(年10%超の上昇が続く状況)は、原油価格が60~80ドルで安定し、いずれ100ドルに戻るなどと言われるようになったころでしょう。
そうなると、シドニー、メルボルンより大幅に住宅が安い上に、地域経済も強い、移住者も増えているということで、爆発的に値段が上がる可能性があります。
ブリスベン経済は資源に依存しているわけではありませんが、州北部で産出される天然ガス、石炭も主要な産業です。
もっとも、ブリスベン全域に及ぶほどの好景気(資源ブーム、不動産ブーム)になることは、当面は見込まれていませんので、現時点で参入するなら、需要と供給のバランスで需要のほうが多いエリアに投資するのが手堅いと考えます。
ブームになれば、以前は見向きもされていなかった割安な地区のほうが、高い値上がり率を示すこともあるでしょう。
ただし、そこに至るまでには、まず都心に近いエリアで住宅価格が高騰し、都心周辺では手が出ない人が増え、周縁部に目を向ける人が増える必要がありますが、ブリスベンの場合、その状況になるまでには相当な年数を要します。
我々がシドニーを見るときは、将来のシドニー人口が900万人になったとき、今のロンドンや東京で言えばどんなエリアに該当するかを考えます。
同様にブリスベンでの投資先を検討する際には、現在のシドニーで言えばどんなエリアに該当するかです。
ただし、現在の人口増加率(年1.5~2%)を前提とすると、そうした大都市と同規模の人口になるまでに、約40年かかることも考慮しなければいけません。
自分が購入した物件を20年後に売却するとして、将来の買い手も、その先の10年、20年の将来性を考えて購入の是非や価格水準を検討するはずです。自身が想定している保有期間の2倍くらいの期間は、ファンダメンタルズ面をチェックしておく必要があろうかと思います。
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