いつ何に投資すべきかは、投資目的、資産背景によって異なりますが、現在の市況に照らして、一般的にこうではないかと思われる見解を共有したいと思います。
実需層
オーストラリア在住で、いずれにせよ住む場所が必要という場合です。
シドニー、メルボルン、ブリスベンで、自分の住んでいる(住みたい)地区で手ごろな物件が売りに出れば、買ってもよいと考えます。ただし、絶好の買い時という時期でもありませんから、決して無理をせず、ちょうど買いたいと思っていたような物件が売りに出され、競合も少ないようであればです。
世界恐慌のような事態を想定するなら別ですが、多少の景気減速くらいでは、家賃も価格もほとんど下がらないと想定されています。むしろ、既に相当な上昇を見せたシドニー、メルボルンですら、物価上昇率(2~3%)程度はしばらく上がり続ける可能性も指摘されています。
2008年から2010年にかけての、サブ・プライムローン問題、リーマンショックのあった時期でも、シドニーの不動産価格は数%程度しか下落していません。
実需層の場合、住宅を購入しなかったとしても、いずれにせよ家賃を支払う必要があります。資金を用意できるなら、今のうちに購入も検討すべきと考えます。
また、現在、オーストラリアとしては歴史的な低金利です。さらに、ひと月ほど前から、ローン金利と頭金の割合に関して、投資家よりも自宅購入者が優遇されています。
銀行の融資姿勢は予告なく、急に変わることもあります。景気の停滞で住宅価格の下落に賭ける(その時まで待つ)としても、その経済情勢では銀行も新規融資をかなり絞るはずで、ローンを組むのが難しくなっているかもしれません。
いつかは自宅を購入したいという実需層の場合は、住宅ローンの面からも、買えるうちに買っておいた方がよいと言えます。
また、現在、オーストラリアとしては歴史的な低金利です。さらに、ひと月ほど前から、ローン金利と頭金の割合に関して、投資家よりも自宅購入者が優遇されています。
銀行の融資姿勢は予告なく、急に変わることもあります。景気の停滞で住宅価格の下落に賭ける(その時まで待つ)としても、その経済情勢では銀行も新規融資をかなり絞るはずで、ローンを組むのが難しくなっているかもしれません。
いつかは自宅を購入したいという実需層の場合は、住宅ローンの面からも、買えるうちに買っておいた方がよいと言えます。
賃貸のほうが目先の支出は少ないかもしれませんが、物価上昇、人口増が続くと見込まれるオーストラリアでは、いずれ家賃も上昇する可能性が非常に高いです。
ところで、手持ち資金がある場合、不動産ではなく、株など他の資産に投じることも考えられます。どちらが得意かという側面もありますが、一般的には不動産のほうが(比較的安心して)レバレッジを利かせやすく、価格の変動も緩やかなため、資産形成の土台として向いていると思います。
シドニー、メルボルン、特に割安なブリスベンでは、自宅購入を検討すべきでしょう。パースは資源価格によって景気や住宅需要が左右されるのと、それ以外の小規模な都市では、人口、経済成長の面で不透明な面もあり、将来の資産価値が少々心配です。
老後の年金も自己責任の部分が大きいオーストラリアでは、自宅購入の場合でも、将来の資産性を考えることが大切だと思います。
十分な資産価値があれば、リタイアの際に売却し、コンパクトなマンションに住み替えて、余った資金は生活費に充てるといった選択肢も増えます。老後は日本でという場合も、終の棲家を購入する資金に充てることができます。
そこで、シドニー、メルボルン、ブリスベン以外の地方都市に在住の場合は、自宅は賃貸を続けながら、前記三大都市に投資物件を購入するのも選択肢です。
ただし、シドニー、メルボルンの好立地では、市場はまだ加熱状態が続いています。オークションなどで、採算度外視(海外への資産逃避を優先)の購入者につられて、必要以上の高値を支払わないよう注意が必要です。
シドニー、メルボルンで自宅購入が現時点で難しい場合、割安なブリスベンで投資物件を購入し、ひとまず不動産マーケットに参入する足掛かりとするのも選択肢でしょう。
オーストラリアの若者の間でも、自宅購入前に、投資物件を購入するケースが増えているようです。特にシドニー、メルボルンでは都心近くの物件価格が高騰し、若い人にはとても手が出ない水準です。都心近くに賃貸で住みながら、手ごろな価格で購入できる郊外に投資物件を購入するケースをよく耳にするようになりました。
都心近くに住みたいが、高くて買えない。賃貸なら何とか払える。一方で、不動産ブームには乗りたい。自分自身は郊外に住みたいわけではないが、投資用として買っておこう、という発想です。
東京では15~20㎡くらいのワンルームもあり、都心マーケットへの参入もそこまで難しくないですが、オーストラリアでは最低でも40㎡以上といったサイズですから、若い人にとっては都心への参入は難しいのが実際です。
逆に、子育て世帯で都心から離れた郊外の戸建てに賃貸で住んでいるが、当該地区の住宅価格の上昇に確信が持てない、それでも自宅を購入すべきかというケースも考えられます。
その場合、戸建ての賃貸を続けながら、都心近くのマンションを投資用として購入するのも選択肢です。(ただし、オーストラリアでは賃借人保護が弱いので、この点は自宅を購入する場合と比べて注意が必要です)
なお、永住者等の場合は中古物件も購入できるため選択肢が広がりますが、Off-the-planや新築に関しては、ブリスベンでも目下の市況で売り手が強気の値段を付けており、慎重な検討が必要です。
投資家-資産形成目的
投資として利益を上げること、資産を築くことが優先の場合です。
オーストラリアの不動産投資(住宅系)は、基本的にキャピタルゲイン狙いです。中長期の価格上昇や家賃上昇が織り込まれているため、当初の家賃収入利回りは低め(表面利回り4~5%)です。
初めからそれを大幅に超える利回りがある場合は、当初期間だけの家賃保証、地方の小規模都市、敷地に別棟を建て増ししているような特殊な物件になるでしょう。将来の家賃、価格の伸び悩みリスクを織り込んだ利回りと言えます。
初めからそれを大幅に超える利回りがある場合は、当初期間だけの家賃保証、地方の小規模都市、敷地に別棟を建て増ししているような特殊な物件になるでしょう。将来の家賃、価格の伸び悩みリスクを織り込んだ利回りと言えます。
キャッシュフローよりもキャピタルゲインというタイプの投資では、自己資金の割合しだいで当面、持ち出しが発生することも珍しくありませんが、キャピタルゲイン(含み益)は最終的に売却するまで課税されないという利点があります。
給与収入などがかなり多く、所得税率の高い方の場合は、キャピタルゲイン型のほうが有利とされています。
なお、海外投資家の場合、8万ドルまでは32.5%の税率で所得税が課税されます。賃貸経営に直接かかるコストや減価償却は差し引くことができますが、海外在住者には「基礎控除」はありません。
なお、海外投資家の場合、8万ドルまでは32.5%の税率で所得税が課税されます。賃貸経営に直接かかるコストや減価償却は差し引くことができますが、海外在住者には「基礎控除」はありません。
保有期間に関しては、今回のシドニー相場のように、運よくピンポイントで底値を拾い、天井で売り抜けたとしても、最低3年のスパンで投資する必要があります。通常は、底値、天井の時期は事前には分かりませんので、少なくとも不動産相場のひとサイクル、7~10年は保有する必要があります。
短期保有で10%、20%程度の値上がりで売却してしまうと、売買のコスト、譲渡所得税も考慮すれば、効果的な資産形成とはなりません。
また、オーストラリアの不動産に投資する利点は、中長期的な人口増、物価上昇、実質所得増にあります。できるだけ長いスパンで保有したほうが、ファンダメンタルに沿った結果が出やすいと考えます。
今、資金を投じたいという場合は、今回の上昇サイクルでまだ上昇余地のあるブリスベンがお勧めです。これは私個人の見解というよりも、大方の業界専門家の見解です。
やはり代表的な都市であるシドニー、メルボルンを狙いたいという場合、今回のサイクルではほぼピークに達しています。上昇余地が限られている一方で、価格下落のリスクもあります。
また、一旦保有してしまうと、維持管理やテナント仲介に係るコスト(一年あたり、物件価格の1.5%目安)、ローンを組む場合は金利の負担も発生します。これらは、物件の価値が上昇しようが、下落しようが負担し続けなくてはいけません。
したがって、特にローンを組む場合、シドニー、メルボルンの物件が投資対象であれば、我々なら今の時期は見送ります。マーケットが落ち着き、物件価格が調整され、物価や賃金、家賃の水準が追い付いてきた時点で、参入を検討します。
今のところ、2019年~2020年頃と考えていますが、中央銀行の金利政策、銀行の融資姿勢、景気動向によって前後しそうです。
一方、大方の予測に反して、シドニー、メルボルンの相場が堅調に上昇を続けた場合、機会を逃すこととなります。この点は、各投資家のリスク許容度しだいでしょうか。我々の場合、実需ではなく投資としては、そこまでリスクを取りたくない(収益の機会を逸しても仕方がない)というスタンスです。
投資家-海外への資産分散目的
利益を上げることよりも、リスク分散、資産保全が優先の場合です。
中国の富裕層では、これに加えて、将来移住するための足掛かりと考えている人が多いと言われています。(オーストラリアで不動産を所有していても、それだけで永住権を取得できるわけではありませんが。ただし、数億円単位の投資ができる富裕層には、投資家ビザ制度があります)
こうした投資家層の場合、一千万円、二千万円くらい割高でも、大した違いはないという感覚でしょう。現在、割高と言われていますが、中長期的に見て底堅いシドニー、メルボルンへの投資が続いても不思議ではありません。為替も考慮すれば、本国の不動産相場と比べて、むしろシドニーのほうが割安かもしれません。
これまで中国に関しては、人民元高(豪ドル安)のため、相対的にオーストラリアの不動産が割安となり、大量の資金が流入していると言われてきました。一方、昨今の人民元の切り下げ、さらには一層の切り下げの思惑で、買うなら今のうちとオーストラリアへの資金流入がむしろ加速するのではとの観測も聞かれます。
早い時期に海外へ資産を分散したい、目先の損得は度外視して、中長期での資産保全を優先という場合は、人口の増加、多様な産業の面で底堅いシドニー、メルボルンがお勧めです。
現在、シドニー、メルボルンの不動産相場は過熱していると言われますが、待っていれば下がるとも限りません。仮にシドニー、メルボルンの不動産価格が下がったとしても、そのとき自国の通貨や資産の価値が目減りしていれば元も子もありません。
メルボルンは自動車産業など、ものづくり系の企業が拠点を置く都市として発展してきました。一方、シドニーは金融、保険、会計・法律などの企業の多くが拠点を置いています。中央銀行、証券取引所の本部所在地もシドニーです。
近年、自動車工場の撤退が相次いでいますが、人件費の高いオーストラリアでは、豪ドル相場がよほど低下しないかぎり、製造業系は苦戦を強いられそうです。
一方で、英語、イギリスの流れを汲む法体系・商慣習といったプラットフォームの強みを活かしやすい金融、会計・法律に関わる産業を擁するシドニーのほうが、アジア・オセアニア地域の拠点として繁栄が続く可能性が高いとみています。
なお、今後数年のスパンでは、ブリスベンが最も有望視されており、中国からの投資家の注目を集め始めているようです。ただし、ブリスベンの人口規模は、シドニー、メルボルンの半分程度です。マーケットの規模が違いますので、投資先の地区を選ぶ際にも注意が必要です。
都心から10kmという立地の場合、シドニーなら都心に近いという印象ですが、ブリスベンではちょっと離れた郊外という印象です。
資産の保全を目的とするなら、ブリスベンのみに集中投資するというよりは、シドニー、メルボルンでも物件を保有しながら、ブリスベンにも分散投資というのが妥当だろうと思います。
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