2015/12/10

2016年はディベロパー受難の年に

シドニー市場の大幅下落は予測されていないものの、これまで活況に沸いたディベロパーにとっては難しい局面を迎えそうです。

第一に売却価格の低下、第二にキャンセル続出の可能性です。

売却価格の低下
まず、シドニー、メルボルンの不動産熱が冷め始めており、想定していた価格で売りさばけない可能性があります。

特に、不動産価格が既に高騰していた2015年に土地を仕入れたディベロパーについては、業界からも心配する声が挙がっているようです。

なお、オーストラリアの大手ディベロパーに関しては、土地を仕入れて大規模マンションの建築許可を取り、そのうえで外国資本のディベロパー(主に中国本土)に高値で転売しているとの事例がよく報じられていました。(いわば土地ころがし)

中国系のディベロパーは、自国の投資家に売りさばく自信があるようですが、大丈夫でしょうか。かつてジャパンマネーも、ニューヨークやハワイ、ゴールドコーストでの苦い経験がありますが。

キャンセル続出の可能性
次に、プレビルド(完成前)の契約で売買契約を結んでいた場合、買い手(特に投資家)が決済に辿りつけない可能性が指摘されています。

監督機関の指導もあり、ここ数か月来、金融機関が消極的になりました。投資用に関しては、大手金融機関では頭金2割以上が必要です。

以前は追加の保証料を支払えば、頭金5%でも購入できたため、差額の現金を用意する必要が生じる投資家が大勢いると言われています。

例えば、2016年にマンションが完成した時点で50万ドル(4500万円)で購入するという約束で、2014年時点で建築開始前に契約したとします。

これまでの一般的なケースは、1割の頭金5万ドル(450万円)を自分で用意し、残額45万ドルは銀行から借りるというものです。2014年時点では、金融機関もそれで事前了解していたと思います。

しかし、金融機関の事前審査は、その時点での参考に過ぎません。当時の条件のままで、2016年に融資を実行する義務は金融機関にはありません。

現在は融資基準が変更されたため、2016年に決済を行う際、銀行からは8割(40万ドル)までしか借りられません。残りの1割、5万ドル(450万円)の現金を決済期日までに捻出する必要があります。

実際にはさらに厳しく、銀行が融資するのは、契約書に記載された購入金額の8割ではなく、銀行が査定した資産価値の8割です。
シドニー市場の軟化もあり、仮に資産価値40万ドルと査定されると、その8割の32万ドルしか融資を受けられません。

このまま50万ドルの契約を決済するためには、手付の5万ドルとは別に、13万ドル(1200万円弱)の自己資金を用意する必要があります。

このため、追加資金を用意できずに契約不履行(手付金没収)となるケース、あるいは、あえて手付金を放棄して契約から抜けるケース(40万ドルの価値しかない物件に50万ドル支払うくらいなら、手付5万ドルを放棄するとの判断)が続出するのではと言われています。

買い手が撤退した場合、ディベロパーは手付分は徴収できますが、当初予定していた売却代金を受け取ることができません。通常、ディベロパーも銀行から融資を受けているため、返済に行き詰るリスクが指摘されています。

2007年頃までの東京の不動産プチバブルでも、新興ディベロパーがもてはやされた時期がありました。シドニーも似たような道をたどるかもしれません。

バブルの歴史を研究した経済学者ガルブレイスによると、ブーム期には「革命児」としてスター扱いされた人物が、バブル崩壊とともに断罪されるというのは、大昔から全く変わっていないとのことです。

また、先日、創業者一代で売買・賃貸仲介ネットワークを築いた企業が、オーストラリアの不動産仲介業としては初となる株式上場を果たしました。(ディベロパーはいくつか上場企業があります)
こうした象徴的な出来事があると、ひとつの時代の終わりも近いと言われることもあります。

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