オーストラリアの主要都市の不動産価格指数の動きについて、先日、政府統計局が公式データを公表しましたので紹介します。2015年3月末までの住宅(新築、中古の全体)の売買実績データを集計したものです。
Source: Australian Bureau of Statistics
2015年3月までの1年間で見ると、シドニーが13.1%の上昇と、ダントツです。
直近四半期で見ても3.1%の上昇と、ペースを維持しています。
ただし、人口(1.5%)、所得(1.4%)、物価(2~3%)の伸びを考慮しても、年10%を上回る価格上昇が何年も続くのは行き過ぎというのが専門家のコンセンサスであり、今回の上昇局面はそろそろ終わりとの声も高まっています。
もっとも、ピークを迎えた後の動向については、横ばいを予想する声と、10%程度の下落を見込む声に分かれています。(物価上昇を考えれば、横ばいは実質的には価格低下です)
一方、メルボルン、ブリスベンは、それぞれ年率4.7%、3.9%と、悪くはないですが、まずまずの上昇率です。
ただし、直近四半期のデータでは0.6%、0.4%の上昇にすぎず、ペースが落ちているように見受けられます。
以上は各都市の全体としてのトレンドを示したデータで、当然ながら、シドニーのどこに物件を持っていても13%の値上がりが享受できたわけではありません。
現在、東京の不動産マーケットも値上がり局面にありますが、東京の中でも23区、さらに23区の中でも都心3区で値上がりが顕著なのと同様です。
その都市が全体として上昇基調にあるのは有利な条件ではありますが、その都市の中のどの地区で、どのタイプの物件を狙うかはシビアに選別する必要があります。
株式投資と異なり、低コストで簡単に損切りや利益確保はできませんので、来年上がるかどうかだけでなく、中長期的に(総じて)堅調に上がり続けるかが大切な視点だと思います。
なお、民間の調査会社も各種の価格データを公表しています。公表時期が早いのがメリットですが、全ての取引を把握しているわけでなく、業者の聞き取りに依拠しているため、必ずしも正確とは言えません。
一方、政府は全ての売買の正確な金額を把握していますので、こちらが公式データということになります。ただし、州政府経由で中央政府が情報を集約し、公表するまでに時間を要します。
オーストラリアでは、印紙税、不動産取得税に相当する税金は、実際の売買価格をベースに個別に計算されますので、売買契約書やローン契約書の写しなど、証拠書類を添えて州政府に提出しなければいけません。
証拠書類は弁護士(司法書士)経由で提出されますし、わずかばかりの税金を節約するために金額を操作するということは、罰則の重さを考えればまずないでしょう。いずれにせよ、親族間の取引など、不自然な取引価格には査察が入ります。
このため、政府が全ての不動産取引の実勢価格を把握しています。これは、オーストラリアの不動産業界が、透明性で世界トップクラスと評価されている一因と思われます。
なお、先ほど、政府統計が公表されるまでに時間を要すると言及しました。売買契約が締結され、その後にローンの本審査等もあり、契約から1~2か月後に決済が行われ、さらに弁護士(司法書士)経由で必要書類が州政府に送付されます。
したがって、政府が公表している価格水準は、実勢価格としては数か月前のものであると言えます。市況のトレンドを確認するための指標としては確実ですが、現在もその価格水準で買えるか、値段交渉できるかという指標としては使えません。
将来の投資に備えて、マーケットをフォローするために政府統計は有用ですが、いざ自分が投資する段階となれば、直近の、より詳細なデータを有している民間調査会社のデータを利用する必要があります。特定の地区限定の売買履歴データであれば、数十ドル程度で提供されています。
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