日本国内でも豪ドル預金を提供している金融機関は数多くあります。
もっとも、中間マージン、為替手数料もありますので、直接オーストラリアの銀行で預金するのに比べれば、諸条件は劣るようです。
そこで今回は、日本在住者よりも有利な条件と考えられるオーストラリア人は、そもそも豪ドル(自国通貨)預金で儲けられるのかというお話です。
当記事の執筆時現在の預金金利(1年定期)は以下のとおりです。
コモンウェルス銀行(豪最大手)… 2.6%
INGダイレクト(ネット銀行大手)… 2.9%
元本保証でこの金利なら資産が増えていきそうですが、所得税や物価上昇も考慮した実質利益を考えたいと思います。
INGダイレクトの1年定期2.9%を前提に、1000万円相当額の預金をすると、受け取る金利は29万円です。
オーストラリアでは、預金金利に課税される所得税は総合課税です。平均的な所得層($37,001
– $80,000)に課税される34.5%(所得税+社会保険料)が適用されたとします。
預金額 1000万円
金利 29万円
所得税等 10万円
手取り金利 19万円
次に、物価上昇分(価値の目減り)について検証します。
現在、オーストラリアの物価上昇率は年2%程度です。豪中央銀行は2~3%に保つことをターゲットとしていますが、現在、低体温の景気を反映し、概ね下限に位置しています。
現在の2%の物価上昇率を加味すると、現在の1000万円は、1年後の1020万円と実質的な価値が同じとなります。
したがって、先述の「手取り金利」から20万円を差し引いた、-1万円が、実質的な預金者の運用益となります。マイナスになってしまいました…
手取り金利 19万円
物価上昇分 20万円
実質運用益 -1万円
手取り金利19万円に全く手を付けなかったとしても、それでようやく元本の価値をギリギリ維持できたかどうかというところです。
表面的な数字の上では、税引き後でも手元のお金が19万円増えているように見えます。
しかし、それを生活費等に使ってしまった場合は、実質的には元本を毀損することとなります。(リタイヤ後など、元本を少しずつ取り崩すことを意図しているなら別です)
不動産投資の場合も、受け取る家賃の中から維持管理費、修繕費、所得税などを負担する必要があり、受け取った分を全て生活費などに使うことはできないのと同様です。
こう考えると、所得税は、受け取った金利全体にではなく、物価上昇分を差し引いた実質金利に課税してほしいものです。
預金金利で本当に利益を出せるのは、預金金利が8%で、物価上昇率が3%といった、景気の過熱を抑えるために金利が高くなっている一時期(リーマンショック前など)だけではないでしょうか。
中長期的に安定して預金金利で資産を増やすとか、(元本を実質的に目減りさせることなく)預金金利だけで生活するというのは不可能だと考えます。
日本から豪ドル預金を行っている方に比べ、手数料などが少ない現地の預金者でもこうした状況です。
日本国内での豪ドル預金の場合、金利で資産が増えるというよりも、円安リスクのヘッジとして、将来円安になっていれば、解約時に受け取れる円が増えている可能性があるということに尽きるのではないでしょうか。
また、中長期的には日本国内の物価上昇も効いてきます。
投資として儲けるというよりも、ある種の保険として、外貨への資産分散、リスクヘッジの役割が大きいと考えます。
一方、将来、オーストラリアに行った時に使えばいいということで、豪ドルのままで受け取ることを選択した場合、為替リスクは少なくなりますが、オーストラリア国内の年2~3%の物価上昇率を加味する必要があります。
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