2015/06/19

海外不動産投資のキー・プレーヤー:不動産仲介業者(その1)

日本でも不透明さが指摘されることもある不動産取引の世界ですが、海外での不動産投資となると、誰が味方で、誰が敵か、把握することはさらに重要です。過度に信頼して痛手を負ったり、騙されたりしないために、海外不動産投資のキー・プレーヤーを紹介します。

以下は一般に海外不動産投資で登場するプレーヤーです。
・不動産仲介業者
・弁護士(ソリシター)
・住宅診断士(ビルディング・インスペクター)
・住宅投資ローン仲介業者(モーゲージ・ブローカー)

本記事では、不動産仲介業者(主に売り手側)について紹介します。

オーストラリアを含め英米系の多くの国では、売り手、買い手双方の仲介を兼ねる「両手取引」が禁止されています。(中立を装い、どちらか一方の便宜を図るおそれがあるため)

売り手側に雇われた仲介業者(セラーズ・エージェント)か、買い手側の仲介業者(バイヤーズ・エージェント)か、はっきり分かれます。委任契約に基づき、それぞれ売り手、または買い手のために最善を尽くすことが義務となります。報酬も片方からしか受け取れません。

オーストラリアでは、エージェントのほとんどが売り手側の仲介業者です。売却時に広告から、交渉、契約書作成まで全部自分でやるという人はまずいないと思いますが、購入時には自分の足で探すという人は多いものです。マーケット規模の面で、売り手側仲介業者のほうが圧倒的に多くなっています。

ホームページ等で売り物件を紹介している業者は、全て売り手側の仲介業者です。買い手にとって、必ずしも敵ではありませんが、少なくとも、自分のために動いてくれる味方だと誤信してはいけません。
彼らは、売買が成立したら売却金額の2%~3%の報酬を売り手から受け取るという契約になっています。買い手からは何も受け取らないのですから(両手取引禁止国の場合)、買い手の便宜を図ってくれるとそもそも期待することはできません。

「希望の物件を探してあげる」と買い手に言うこともありますが、それはあくまでも売却の委託を受けている物件の中でということです。
また、「買い手側の仲介手数料はいただきません」と言うかもしれませんが、これはサービスではなく、そもそも受け取ってはいけないのです。

一方、売り手側の業者が敵かというと、そこまでははっきり言い切れません。
売買が成立しないと仲介業者も報酬がもらえないため、売り手側に立つといっても限度があります。売り手のために最善の価格・条件を目指す義務はあるものの、まずは契約を成立させたいというのが本音です。

例えば、マンションの価格5000万円で、仲介手数料3%、歩合制で担当者個人への報酬が半分とします。そのままの価格で売却すれば、担当者は75万円を手にすることができます。
一方、担当者が交渉でがんばり、さらに100万円高く5100万円で売却できたとして、担当者の取り分が増えるのは15千円です。
高く売れるに越したことはないが、多大な労力をかけるよりは、早く契約まで持っていきたいというのが実際です。

ここで、買い手が4900万円なら買うと値下げを提案したとします。仲介業者の担当者としては、個人の取り分が15千円減りますが、それでも735千円は確保できます。いつまでも揉めているよりは、売主を説得して契約まで持っていき、他の担当物件に注力したいと考えても不思議ではありません。

投資家としては、売り手側の仲介業者を自分の味方だと誤信しないよう要注意ですが、全面的に売り手の味方とも限らないので、上手く活用することが大切です。
値下げの提案や諸条件の交渉も、仲介業者を通じないと売り手本人に伝わりません。仲介業者との関係を大事にして、上手く伝えてもらうことも必要です。売り手側の事情(値下げ交渉の余地)も聞き出せるかもしれません。

逆に、将来、自分が売り手サイドになった際には、あまり価格や条件に固執しては、お金にならないお客さんということで、委託した物件を放置されるかもしれません。

次回の記事では、買い手側の仲介業者(バイヤーズ・エージェント)についてご紹介します。

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