2015/07/18

海外不動産投資のキー・プレーヤー:住宅診断士

日本でも不透明さが指摘されることもある不動産取引の世界ですが、海外での不動産投資となると、誰が味方で、誰が敵か、把握することはさらに重要です。過度に信頼して痛手を負ったり、騙されたりしないために、海外不動産投資のキー・プレーヤーを紹介します。

以下は一般に海外不動産投資で登場するプレーヤーです。
・不動産仲介業者
・弁護士(ソリシター)
・住宅診断士(ビルディング・インスペクター)
・住宅投資ローン仲介業者(モーゲージ・ブローカー)

今回は、住宅診断士について紹介します。

不動産投資の場合、特定の物件を取り扱うことになります。基本的には、同品質の他のものと交換してもらうことができません。明らかに仕様書と違う場合は別として、多少問題があるとしても、それも織り込んで売買したこととなります。

中古の場合は経年劣化の痛みがありますが、新築の場合も、設計ミス、施工ミス、経費削減のための手抜きはありえます。

売買契約書の中に、住宅診断士による検査の結果次第で、契約を解除できる権利を盛り込んでおくべきです。オーストラリアではこれは通常の契約内容です。

ただし、契約の文言には注意が必要です。

売り手側の用意した契約書では、「建物の構造に重大な欠陥がある場合のみ解除できる」となっていることがあります。

例えば、下水の配管に施工ミスがあっても、解除はできません。構造に欠陥があっても、「『重大』ではない」と売り手が言い張るかもしれません。

もちろん、業者に是正を求めることはできますが、最終的に問題が解決するかは分かりません。それに要する時間と心労を考えれば、手っ取り早く契約から抜け出したほうが得策のこともあるでしょう。

ひどい場合は、「売り手の指定する住宅診断士による検査」と記載されていることもあります。

買い手にとっては、「買い手の指定する住宅診断士による検査結果に満足しない場合は、解除できる」という内容が望ましいです。

もっとも、あまりにも買い手有利の内容では売り手も納得しません。この点でも、やはり自分サイドの弁護士(ソリシター)を立て、現地の商慣習も踏まえて落としどころを探ってもらうことが重要です。

売り手側(ディベロパー、仲介業者など)が紹介した住宅診断士を利用するのは注意が必要です。

仕事を紹介してもらっている手前、「大きな問題を発見し、売買契約を潰してしまったらまずい」という心理状態で検査をしてもらったのでは、買い手としては安心できません。

さらにその検査費用まで負担させられたのでは、何のための検査か分かりません。

弁護士とともに、住宅診断士については、自分サイドに立って問題がないかチェックしてくれる人を雇う必要があります。構造に問題がある場合は、数十万円程度の出費では済みません。

仮に売り手を訴えるとしても、裁判には費用も時間もかかります。まして海外では、一筋縄ではいきません。そうした事態は未然に防ぐに越したことはありません。

我々の場合は、住宅投資ローン仲介業者(モーゲージ・ブローカー)から評判の良い業者を複数紹介してもらい、その中から選定しています。

物件のサイズにもよりますが、マンション(区分)であれば、オーストラリアでは4~5万円程度です。構造のヒビ割れのチェック、サーモグラフィを使っての壁内部の調査(シロアリ、水漏れ)や不自然な修繕跡はないか、配管の状況、床材・タイルの状況、湿気などを調査してもらえます。

数日後に報告書(レポート)が送られてくるのですが、彼らは問題を指摘するのが仕事ですから、事細かに記載されています。一見、問題だらけの物件に感じてしまいます。中古物件では特にそうです。

恐れをなして契約を取りやめてしまう人もいるようですが、何の問題もない完璧な物件はありません。ちょっとした経費で修繕できるものなのか、構造上の重大な問題なのか、診断士に問い合わせて確認することが大切です。

検査の結果、少々問題があることが発覚し、「契約を取りやめてもよいが、問題がある分を値下げするなら、買ってもよい」と交渉材料として使う投資家もいます。

海外不動産投資で手痛い失敗を防ぐには、弁護士とともに、住宅診断士の役割は重大です。2者あわせて20万円程度は、必要経費として初めから見込んでおく必要があります。

「売り手側が用意してくれるから、経費が浮いてラッキー」と考えては思わぬ落とし穴に陥るおそれがあります。もっとも、売り手側が負担といっても、たいていは売買価格の中に織り込まれているのですが。

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