マンションが完成する前に、パンフレットやモデルルームを見て不動産投資を行うケースがあります。
プレビルドの投資では、以下のメリットが考えられます。
・頭金(10%程度)だけで物件を確保できる
・残金の支払いを建物完成まで先延ばしできる
・完成前に購入権の譲渡も
一方、リスクとしては以下の点が挙げられます。
・完成時期の遅延
・躯体に施工ミス、手抜き工事はないか
・内装などが当初の説明どおりか
・完成時の住宅市況は想定どおりか
さらに、最近、プレビルド案件に関して、イギリスで為替リスク、オーストラリアで融資リスクが報じられており、紹介したいと思います。
まず、イギリス案件で報じられた為替リスクです。
本件は、マレーシアの大手ディベロパーが参画し、ロンドンで建設が行われている案件です。
マレーシア企業が関与していることもあり、マレーシア人も多数、プレビルドで購入したようです。支払いは英ポンド建てです。
頭金の支払いまでは問題なかったでしょう。建物はまだ完成していないようですが、当初と比べて、マレーシア・リンギットが英ポンドに対して既に35%下がりました。
投資家は、建物が完成し引き渡しを受ける際に残金(購入価格の約90%)を支払う必要があります。マレーシアからの投資家にとっては、リンギット建てで考えると、支払う金額が当初想定より35%増えたことになります。
資金に余裕がある投資家なら、長期投資として割り切れるかもしれません。しかし、資金繰りがギリギリだった投資家は、(リンギット建てで)35%も増額となると融資を受けられるか銀行の判断が変わるおそれもあります。
次に、オーストラリア案件で報じられた融資リスクです。
オーストラリアでは、建物完成前の案件はOff-the-planと呼ばれています。ディベロパーが計画段階で物件の売り出しを始め、建物が完成するまでに約2年間のタイムラグがあります。
例えば、2017年に完成予定のマンションの一室を、2015年に5000万円で売買契約を結んだとします。
2015年の契約時に支払うのは、たいてい物件価格の1割の500万円です。(deposit:頭金)
融資を受ける場合、この時点でも事前に銀行に相談するはずですが、これはあくまでも仮のものです。本審査は2017年に残金4500万円を借りる際に行われます。
「金融機関の現在の審査基準や、投資家の所得や資産状況に変化がなければ、2年後も融資可能と思われます」といった目安にすぎません。
融資する側としても、2017年時点で投資家の所得や雇用がどうなっているか、まだ分かりません。したがって、現時点で融資を確定することはできません。
オーストラリアでは、融資の事前審査が有効なのは、90日間程度です。2年先の融資を確約することはとてもできません。
そして、先月来、豪主要銀行が投資家向けの不動産投資ローンを絞り始めました。これは、投資家主導で不動産価格が高騰している状況への政府の懸念に応えること、返済リスクの高い融資を減らしたいという銀行自身の思惑(経営安定化)があると言われています。
具体的には、
・投資用ローンには物件価格の8割までしか融資しない
・自宅用ローンよりも高い金利を要求する
というものです。(後者は日本では当たり前ですが)
プレビルドで購入する場合、当初に支払いが必要な頭金は大抵1割です。残りの9割は、銀行から融資を受ける予定の投資家も多いと思われます。(特に豪国内の投資家)
しかし、大手銀行に関しては、8割までしか融資しない方針に変わりました。中小の金融機関も追随する可能性があります。
物件価格が5000万円だった場合、融資が受けられるのは4000万円までです。頭金で既に500万円を支払っているとしても、さらに500万円の現金を捻出する必要があります。
しかも、銀行は、独自の「物件価格」を基準に融資可能額を算定します。ローン返済が滞った場合、物件を売却して融資を回収できそうか考えているためです。
投資家が契約した「物件価格」が高すぎると判断された場合、銀行が査定した「物件価格」の8割までしか融資を受けることができません。
この場合、投資家はさらに自己資金を用意する必要があります。また、融資を受けられるとしても、当初想定より高い金利となりそうです。
このため、追加での自己資金を捻出できず、やむなく解約し、頭金を失う投資家も少なくないと懸念されています。
あるいは、物件の引き渡しまでは乗り切ったとしても、想定より高い金利支払いに耐え切れず、行き詰る投資家も出てくると懸念されています。
また、建物の完成直前で解約が続出した場合、ディベロパー側は頭金を没収できるとしても、それは物件価格の一部にすぎません。ディベロパーが資金繰りに行き詰まり、連鎖的に影響が広がるおそれも指摘されています。
悪いシナリオでは、融資の制限、金利の上昇を受けて、徐々に投資家の活動が鈍り、新築物件のだぶつき、価格の低下が起こりそうです。さらに、住宅市場の低迷を受けて、金融機関の評価額も下がり、想定していた金額の融資を受けられない、住宅購入の解約が増える、ますます在庫が増える、といった悪循環に陥るおそれがあります。
自分が購入する側の場合、こうした事態でも倒産しそうにないディベロパーを選ぶことが大切です。今回のブームに乗って、次々に案件を開発している新興企業もあります。
物件完成前にディベロパーが倒産してしまうと、プロジェクトを引き継ぐ企業が現れるかも不透明で、仮に頭金は戻してもらえるとしても、いつになるか分かりません。
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