将来の価格上昇が期待される場合、それを織り込んだ現在の価格が形成され、家賃の利回りは低くなる傾向があります。現状、一等地住宅の家賃利回り(グロス)は、台湾やシンガポールでは2%程度、シドニーでは3~4%程度です。
一方、将来の物件価格下落(家賃下落)が見込まれる場合、それを補うため現在の家賃利回りは高くなる傾向があります。近年、東京でも価格上昇に伴い利回りが低下したとはいえ、まだ表面利回り6~8%は狙うことができます。世界の大都市の中では高い水準です。
日本の地方都市ではさらに高い表面利回りとなっていますが、将来の価格下落に加えて、空室率の増加、家賃下落のリスクも織り込んでいると言えます。
キャピタルゲイン狙い
オーストラリアのように人口、所得(一人当たり実質GDP)が伸び続けると予測されているマーケットの場合、中長期的には住宅価格の上昇が期待できます。物価、賃金の上昇に伴い、結果的に、家賃収入も増えるでしょう。
これらを織り込んだ価格が形成されているため、現時点で、安く買うことはできません。家賃の利回りも低いです。ローンを組めば当初は(家賃が相応に上昇するまでは)持ち出しが発生します。
このため、物件を買い進め、資産規模を一気に拡大させるのは困難です。現金で購入できる資産家、不動産以外に相当な収入(サラリー)がある高所得層でないと、2件、3件と短期間で買い進めることはできません。
既に所有する物件の値上がり分(エクイティ)を抵当に入れて、次物件のための頭金を借りる方法もありますが、次物件の保有コスト、ローン返済分のキャッシュフローを別途確保する必要があります。
オーストラリアでは、投資物件を3件以上所有しているのは、不動産投資家のうちの1割未満にすぎません。日本のワンルームのように、数百万円から買える小型物件が(少なくとも都市部には)存在しないという要因もあります。
キャピタルゲイン狙いの不動産投資は、中長期的に資産を形成したい、次世代に資産を引き継ぎたいという方に向いていると考えます。一気に資産規模を膨らませ、潤沢なキャッシュフローを得てリタイアしたいという方には向きません。
なお、途上国での不動産ブームでタイミングが合えば、短期でも大幅に資産価値が増えることがあるかもしれませんが、売買のコスト、譲渡所得税を差し引けば、手元にはそれほど残らないかもしれません。
キャピタルゲイン狙いの資産形成では、数年間のスパンで、物件価格が上昇し、家賃収入も増え、ローン返済にも余裕ができた時点で、次の物件取得(買い増し)を考えるというのがオーソドックスです。
以下は、オーストラリア主要都市での過去10年間の家賃上昇率(年率)です。
Source: propertyupdate.com.au
シドニーでは、年平均4.8%上昇し、過去10年間で家賃が約1.6倍になっています。10年前に家賃の表面利回り5%で資金を投じていた場合、現在は利回り8%相当のキャッシュフローに成長したことになります。(さらに、直近3年間だけで約40%のキャピタルゲインもありました)
もっとも、直近では景気の低空飛行を反映し低い伸び率に留まっていますが、それでも年2~3%とプラス圏を維持しています。
もっとも、直近では景気の低空飛行を反映し低い伸び率に留まっていますが、それでも年2~3%とプラス圏を維持しています。
なお、以上は各都市の平均値です。平均を上回る地区・物件を選定することが中長期でのパフォーマンスを大きく左右します。家賃収入が増えれば、当初は持ち出しが発生していたローン返済も年々楽になり、次の物件取得の足掛かりとなります。
キャピタルゲイン狙いの投資を続け、自分がリタイアする時期を迎えた際、家賃収入も相応に増えているはずですが、成長資産の性質上、資産規模の割にキャッシュフローは少ないはずです。
例えば、価値2億円相当に成長していたとしても、その時点の一般的な表面利回りが5%とすれば、家賃収入は1000万円。維持管理費、所得税を差し引けば手元には数百万円しか残りません。
例えば、価値2億円相当に成長していたとしても、その時点の一般的な表面利回りが5%とすれば、家賃収入は1000万円。維持管理費、所得税を差し引けば手元には数百万円しか残りません。
そこで、この時点で売却して現金化する、キャッシュフロー型の資産に組み替えることも選択肢です。
売却せずにリバースモーゲージで銀行から融資を受け、老後資金に充てている投資家もいます。
売却せずにリバースモーゲージで銀行から融資を受け、老後資金に充てている投資家もいます。
キャッシュフロー狙い
現時点で家賃収入の利回りが高いということは、将来の物件価格の下落、家賃の下落リスクを織り込んでいると言えます。(少なくとも、多くのマーケット参加者がそう考えているため、その利回り水準が形成されています)
オーストラリアでも、戸建ての裏庭に「離れ」(俗称:Granny flat おばあちゃん用の離れ)を増築し、そこを別の世帯に貸し出すことで、家賃利回りを上げる手法もあります。もっとも、そうした特殊な物件は将来の転売先が限定されるため(おそらく、キャッシュフロー狙いの投資家しか買わない)、キャピタルゲインの側面が弱くなります。
オーストラリアでも、戸建ての裏庭に「離れ」(俗称:Granny flat おばあちゃん用の離れ)を増築し、そこを別の世帯に貸し出すことで、家賃利回りを上げる手法もあります。もっとも、そうした特殊な物件は将来の転売先が限定されるため(おそらく、キャッシュフロー狙いの投資家しか買わない)、キャピタルゲインの側面が弱くなります。
東京でも築古のワンルームマンションであれば、ローンを組んでも、想定されるキャッシュフローは黒字で回せるはずです。持ち出しが発生しないため、物件保有の規模を拡大しやすいと言えます。
一方、オリンピック開催等による一時的なブームを別とすれば、中長期的に見て、例えば、年1%程度の価格下落、家賃下落も見込んでおく必要があります。
中長期的に人口が減少し、実質賃金もそれほど伸びないと想定されるマーケットでは、投資した最初がピークで、リターンは年々減少する可能性があります。
今のところは、個人的な実感としては、東京のワンルーム家賃も下げ止まり感があります。2年前までは、テナントさんの入れ替わり、契約更新の際には、以前より少し下げないといけないという圧力を感じていました。家賃を下げないなら、代わりに礼金(更新料)、敷金をゼロにするなど、実質的な値下げが必要でした。
現在は、管理会社さんからも「家賃据え置きで契約更新していいですか」という連絡をいただいたくらいで、価格の維持は難しくないという印象です。
もっとも、保有物件が年々古くなっているのは事実で、10年後、20年後も現在の家賃水準を保っているとは到底考えられません。
キャッシュフロー狙いの場合、持ち出しが発生しない物件であれば、買い進めることは難しくないかもしれません。しかし、当初の家賃収入をいつまで保つことができるか、将来売却した際にはキャッシュフローとキャピタルゲイン(ロス)のトータルで、どれくらいの資産を築くことができるか、シミュレーションしておくことが必要です。
人口の減少、家賃の下落リスクも考慮すると、建物が古くなっても持ち切るというのはリスクが高いと考えます。現時点ですら、郊外の築数十年のマンションは苦戦しています。20年後、安定した年金の代わりになるとは到底考えられません。
自分で一棟保有している場合は全面的なリノベーションなど手が打てるかもしれません。しかし、区分所有の場合は手段が限られます。バリューアップして家賃を上げたいオーナーと、家賃は低くて構わないからコストを掛けたくないオーナーの利害が対立することがあるからです。
自分が所有する居室内だけ立派に改装しても、建物の外観や共用部のグレード・雰囲気とマッチしていなければ、高めの家賃を払ってでも住みたいというテナントさんを見つけるのは困難です。
キャッシュフロー狙いの場合、市況を見ながらになるとは思いますが、5年、10年のスパンで、キャッシュフローから蓄えた分も活用しながら、より都心に近い一等地の、新し目の物件に買い替えていく必要があろうかと思います。将来、人口が減少したとしても、需要を維持できる優良資産を築いていくという観点です。
もっとも、キャッシュフロー型の場合、初めに取り組みやすい、黒字である限り物件を増やしやすいというメリットがありますが、毎年所得税を支払い、残った分を再投資に回すこととなるため、効率の面ではデメリットもあります。
特に、税率の高い高額所得者の場合、キャッシュフローでは赤字だが、キャピタルゲイン(含み益)で黒字となる投資スタイルのほうが有利と考えられます。
特に、税率の高い高額所得者の場合、キャッシュフローでは赤字だが、キャピタルゲイン(含み益)で黒字となる投資スタイルのほうが有利と考えられます。
キャッシュフロー型の投資で資金ベースを築き、(当面、リタイアを考えていないのであれば)、これを原資として、キャピタルゲイン型の投資にシフトしていく戦略も考えられます。

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