2014/07/28

オーストラリアのどこに投資すべきか

オーストラリアは広大なため、不動産投資と言っても、どこで買えば良いかよく分からないと感じるかもしれません。

オーストラリアの人口と経済活動は、沿岸部に集中しています。将来の住宅需要、それから物件管理の利便性を考えれば、こうしたエリアを選ぶのが鉄則です。

下図の赤い部分だけで、オーストラリアの経済活動の8割を占めています。これだけでも対象がかなり限定されていることがお分かり頂けると思います。

Source: Grattan Institute

さらに、各主要都市の中でも、経済活動の中心地がはっきりしています。下図は、上から順に、シドニー、メルボルン、ブリズベンです。






Source: Grattan Institute

雇用の量は経済活動の多い場所に集中しますので、このエリアへの通勤の便を考慮することは大切です。シドニーでは、通勤時間帯の慢性的な渋滞のため、人気エリアが、緑豊かな郊外から、市の中心に近いエリアへと移りました。このトレンドの変化は、ここ10年~20年の住宅価格にも影響を及ぼしています。

また、こうした経済活動の中心地周辺に、店舗、レストラン、カフェなども集まります。さらに、こうした地区に対しては、州政府や市役所も社会インフラ整備に手厚く投資します。
特に、インフラ整備については、政府が税金を使って、自分の不動産の価値を挙げてくれるようなものです。

もっとも、不動産の価格、家賃の動向は、需要と供給のバランスに左右されます。たとえ経済活動の中心地で需要が多くても、タワーマンションが次々にできるなど、需要以上に供給が多ければ値上がりは期待できません。

経済活動の中心地までのアクセスが良いことに加えて、建築規制や物理的な土地不足のために新規供給が限定されている地区が狙い目です。都市の規模が拡大していく中、こうした地区はますます貴重性が高まります。

現在の都市圏人口は、シドニー、メルボルンは約400万人、ブリズベンは約200万人です。豪政府統計省は、2050年にはこの人口が2倍になると予測しています。

将来、(東京に例えれば)千代田区、港区、渋谷区の高級住宅街のようになりそうな地区を、今のうちに押さえておくということです。

いまや国際都市のシドニー

シドニーでは、家庭で英語以外の言語を話している住民の割合が40%近くを占めています。(国勢調査データ)

この割合は、1996年時点で27%、2011年時点で38%と上昇が続いています。

市内の21の地区では、英語が第二言語(または第三言語)となるくらい、外国語を話す住民が増えています。ある地区では、英語を主に使っている家庭は12%にすぎません。

これを東京で例えれば、港区南青山(1~7丁目)の住民14千人のうち、家庭で日本語以外を話している住民が過半数といった状況です。

シドニーでは、外国語のうち最も使用割合が高いのはアラビア語で、市西部を中心に5%を占めています。次いで、市北部を中心に中国語(北京語、広東語)が続きます。

市全体で、約240の言語が使用され、使用者が千人以上いる言語に限定しても75あるようです。

かつては、シドニーといえども、世界全体の中で見れば、南半球の遠方にある地方都市といった位置づけでした。

今では、シドニー、メルボルンは人口400万人の都市圏へと成長しています。シドニーの人種・民族の多様性を見ると、ヨーロッパの中心都市ロンドンと似た状況です。

近年、オーストラリア主要都市の不動産価格が高騰していますが、これらの都市が国際都市として認知され、世界中から人・資本が流入していることと無縁ではないでしょう。

都市の経済規模で見れば世界のトップクラスではないかもしれませんが、生活の質に関しては、どの調査でも世界ランキングの上位に顔を出しています。それだけ、移住先としても選好されています。

一方、日本では、東京ですら外国人の割合は3%強にすぎません。人口減少、経済活性化の対策として日本でも移民政策が議論されていますが、シドニーの状況と比べると、東京が国際都市と呼ばれるまでの道のりは、まだまだ遠いようです。

2014/07/25

各国の国民生活の豊かさ

海外の不動産に投資する場合、当面は貸し出すことが多いですが、いずれは自分が住む可能性を想定して買うこともあります。

ライフスタイルは人によって異なりますので、賃貸に回す予定なら、必ずしも自分が住むために理想的な物件でなくても良いと思いますが、自分なら絶対に住みたくないような物件(ロケーション)であれば、他人も同じように考えるでしょう。

将来の価格上昇、家賃上昇を狙うなら、自分でも住める、他人も住みたいと思うであろう場所で物件を選ぶことがリスク低減につながります。

環境の良いところで住むためなら少々割高の家賃を払ってもいいと考える人、また、その家賃を払える資力がある人が好むロケーションを選ぶということです。

国ごとの全般的な生活環境については、国民生活の豊かさを示す指標として、国連開発計画が「人間開発指数」を毎年公表しています。

2014年版の上位国と、不動産投資で検討されることが多いアジア諸国の状況を見てみましょう。

1 ノルウェー
2 オーストラリア
3 スイス
4 オランダ
5 アメリカ
6 ドイツ
7 ニュージーランド
8 カナダ
9 シンガポール

15 香港、韓国
17 日本

62 マレーシア
89 タイ
91 中国
108 インドネシア
117 フィリピン
(調査対象187ヵ国中の順位)

上位は一人あたりのGDPが多い国と概ね一致しているようです。
経済的に余裕があるから教育、福祉、社会インフラが充実する。教育、社会インフラが整っているから、経済競争でさらに有利になるという構図があるかもしれません。

また、オーストラリア、アメリカ、ニュージーランド、カナダ、シンガポールと、中国の不動産投資家に人気の国も上位に入っています。
いずれは移住することも視野に入れて、生活環境の整った国を投資先として選んでいるのでしょう。

こうした国へは、生活環境の良さ、高い収入を求めて世界中から移民が集まるため、中・長期的に不動産への需要が見込める(価格が上がりやすい)ということで、ますます投資先として選好されることとなります。

アジア諸国は、国民生活の豊かさという点では、まだまだこれからの国が多いですが、マレーシアは平均を超える水準まで豊かになってきています。

現状では、途上国(中進国)で住むにはまだ不便を感じることがあるかもしれません。それでも、明日は今日よりも良くなっているはずと皆が信じて活発に動いている中で生活するのは、先進国ではなかなか経験できません。

2014/07/22

オーストラリア不動産の価格見通し
- 2016年まで

国土面積が広い割には、住宅地として利用可能な土地が限られているため、オーストラリアの住宅はそれほど安くはありません。

オーストラリアといえども、内陸部は砂漠ないしは乾燥地帯ですので、宅地に関しては無限の土地があるわけではないのです。

また海外からの移住者が多く、人口が増え続けています。限られた土地で人口が増えているため、当面は住宅価格の上昇が続きそうです。

今後の住宅価格について、豪四大銀行の一角ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)が見通しを出しています。

まず、今後1年間(20146月~20156月)の価格上昇予想は以下のとおりです。

1 ブリズベン (6.3%)
2 シドニー (5.3%)
3 パース (4.9%)
4 メルボルン (3.1%)
5 アデレード (1.8%)

下図は、各都市の上昇率のイメージ図です。
20166月までの2年間で、上昇率トップはブリズベン(20156.3%、20164.8%)。現地投資家が今、最も注目している都市です。

Source: NAB

2015年中に豪中央銀行の利上げが想定されており、このため、2016年にかけて全国的に不動産価格の上昇が落ち着くと見られます。

なお、上記は都市ごとの平均値です。各都市の中の全ての地区で同じように上昇するわけではありません。

下図のように、各都市の中で、平均以上の上昇が予想される地区(Suburb)が公表されています。(一部、小規模都市については、都市名のみが挙げられています)

これらの地区は、東京で言えば、例えば青山、六本木、田園調布といった街の区分に該当します。

Source: NAB

なお表中に、「Brisbane」「Sydney」「Melbourne」と挙がっていますが、これは各都市の商業の中心地区(Central Business District)を意味します。都市全域のことではありません。

一つの都市の中でも、需要と供給のバランスによって、3%しか上昇しない地区もあれば、10%上昇する地区もあります。NABが予想しているブリズベンの6.3%上昇というのは、こうした地区ごとの違いをならした数字です。

なお、上記は都市ごとの平均値ですので、各都市の中の全ての地区で同じように上昇するわけではありません。

どの都市で物件を買うかよりも、どの都市のどの地区で買うかが重要です。さらには、その地区での需要にマッチした間取りを選ばなければなりません。

なお、冒頭のナショナル・オーストラリア銀行の東京支店では、日本人向けに、オーストラリア不動産の投資ローンも提供しているようです。

オーストラリア主要都市の家賃動向

オーストラリア主要都市の家賃動向(20146月)が発表されました。
(データはRP Dada社調査)

直近四半期で見ると、戸建てはメルボルン(-1.3%)、パース(-1.0%)が弱含み。

マンションはブリズベン(-1.3%)が弱含みの一方で、シドニー(2.0%上昇)、メルボルン(1.4%上昇)が堅調です。

前年同期比で見ると、シドニーは、戸建て、マンションとも、家賃が4%以上の上昇を示しています。
一方、パースでは5%の下落と、資源ブーム一服による需要の低下傾向が表れています。

ここ5年間の平均上昇率で見ると、シドニーは戸建て、マンションとも3%程度の持続的な上昇が続いています。

毎年3%の上昇が5年間続くと、複利計算で、16%上昇します。5年前と比べて(平均的な物件でも)16%高い家賃が取れているというのが、オーストラリア不動産の魅力です。

ローンを組んでいる場合、金利に大きな変動がなければ基本的に返済額は同じで、家賃収入は増えていきますので、毎年返済が楽になっていくということです。

日本の不動産投資では、基本的に家賃の下落を見込まなければなりません。この点で、オーストラリアの不動産投資は大きく異なります。

Source: RP Data

2014/07/18

オーストラリアの空室率-全国で2.3%

20146月時点での住宅の空室率が公表されました。(SQM Research

シドニーの空室率は1.9%で、前年(2.0%)とほぼ変わらず。
シドニーでは、空室が1.9%しかないのに対して、人口が年1.7%のペースで増加しています。新築物件の供給が続かなければ、住宅ストックがすぐに足りなくなる状況です。

メルボルンは2.7%と、前年よりわずかに改善していますが、主要都市の中では高めの水準のままです。

ブリズベンは2.4%と、前年の2.0%から上昇しています。市の中心部近郊で新規開発が増えていますが、その供給ペースに人口の伸びが追い付いていない様子です。

なお、オーストラリア全国での空室率は2.3%となっています。

Source: SQM Research

オーストラリアでは、空室率3%で需給が均衡している状態と言われています。

全般に空室率が上がっていますので、昨年と比べれば、借りる側の負担がやや軽減されたと言えます。

もっとも、全ての都市で空室率が3%を下回る水準にありますので、全般的に見れば家主に有利な状況が続いています。

なお、上記データは、あくまでも都市全体のものですので、空室率がゼロに近い地区もあれば、6%程度で推移している地区(Suburb)もあります。

これは、住環境の質や、大型開発が乱発されて需要が追い付いていないなど、地区特有の事情に左右されます。

日本では住宅系の明確な空室率データ(空き家率ではなく)はありませんが、賃貸管理業者によると、ちゃんと管理されている賃貸物件に関しては、東京で空室率5%程度のようです。

もっとも、東京ですら人口がほぼ横ばい(単身者が増えるため、世帯数では当面やや増)にも関わらず、新築マンションの供給は続いていますので、古い物件の解体も合わせて行っていかないと、いずれは空室率が上がる一方になってしまいます。

2014/07/11

オーストラリアの賃貸動向-シドニーが堅調

シドニーのマンション(Unit)の家賃は、昨年比で5.3%上昇しました。
メルボルン、ブリズベン、アデレードでも上昇していますが、やや力強さに欠ける結果となっています。 

Source: Financial Review

需要に比べて、新規供給が追い付いていないシドニーでの上昇が目立ちます。

一方で、パース、キャンベラでは家賃下落が顕著です。パースでは資源ブーム一段落の調整が進んでいるようです。キャンベラ(政治都市)は国家公務員削減によるマーケット縮小の影響が出ています。

なお、表中の家賃額は週家賃ですので、月家賃に直すと、シドニーの平均的なマンションで2,140ドル(21万円)程度となります。ブリズベンのマンションで、月15万円といったところです。

こちらには、学生寮を除いて、いわゆるワンルーム・マンションはほとんどありませんので、日本に比べて家賃の平均額は高めに算出されます。若い独身者は、たいてい友人や同年代の親類と一緒に2LDKを借りて、家賃を折半しています。

シドニーの住宅価格は、ここ一年で戸建てが15%、マンションが12%程度上昇していますが、家賃もそこまでの勢いではないものの、価格の上昇に追いつく様子を見せています。

なお、シドニー全域での空室率(住宅系)は、約1.7%です。東京駅前、丸の内のオフィスビルよりも空室率が低いです。
建築規制が厳しく、都市中心部の限られた地区を除いて、東京のように敷地いっぱいに高層マンションを建てられません。人口の伸びに比して住宅供給が不足している状況が続いています。

空室率が低いことに加えて、キャピタルゲインも見込めることから、表面利回り(Gross rental yields)5%程度となっているのがオーストラリア不動産市場の特徴です。

東京でも、近年は表面利回りが低下傾向ですが、それでもまだ89%程度(中古ワンルーム)は期待できるでしょう。

ただし、表面利回り5%というのはあくまで平均的な物件であって、高いキャピタルゲインが期待される一等地の戸建ては2.5%、マンションは4%くらいです。

オーストラリアの不動産投資(住宅系)は、基本的にキャピタルゲイン狙いが中心です。家賃収入は、住宅ローンの返済に充てるだけの感覚です。
もっとも、物価の上昇、人口の拡大に伴い、通常は家賃も上昇していきますので、5年、10年も経てば、入ってくる家賃の額もずいぶん増えているということになります。

目下のところ、オーストラリア投資家の目は、出遅れ銘柄のブリズベンに向かっています。徐々に価格も上向いているようですが、まだブームというほどではありません。

なお、今回の全国的な不動産価格上昇サイクルは概ね2015年中までで、2016年からは価格調整が始まるというのが現地専門家のコンセンサスでした。
これは、2015年中に中央銀行が利上げ(金融引締め)に動くことを織り込んでの予想です。(だだし、各都市の経済状況によって、ピーク時期は前後します)

先日政府が発表した雇用統計によると、失業率の回復が思わしくなかったことから、さらなる利下げ観測も浮上しています。

さらなる利下げに踏み切った場合、または利上げ時期が後ろにずれた場合は、価格の上昇サイクルが従来予想より長く続くかもしれません。

2014/07/10

中国資本の不動産投資先

中国から海外の不動産に投じられた金額は、2014年第1四半期だけで、21億ドル(約2,100億円)に及ぶようです。(世界大手の不動産サービス企業JLL調査)

もっとも、Orient Capital ResearchCollier氏によると、この21億ドルは正規ルートの取引で把握されている金額にすぎず、いわゆるシャドー・バンキングを介したものは含まれていないため、本当の投資金額はその2倍、3倍でも不思議ではないとしています。

逆に考えると、中国からそれだけの資本が流出していることになりますが、国内の不動産市場の過熱を抑制したい中国政府としては、今のところ、国民の海外投資には異を唱えてはいないようです。

しかし、資本流出があまりに加速するようだと、いずれ引き締めに動くかもしれません。海外送金に規制をかけるなど、中央政府が動けばすぐに実行できそうです。

もっとも、政府がそういう動きを見せれば(うわさでも)、駆け込み需要でますますキャピタルフライトが加速するかもしれません。

日本でも、中国をはじめ、香港、台湾の投資家が、東京のマンションを買い進めていることが話題になっているところです。

前述の約2,100億円の投資先については、以下の少数の都市で過半数を占めていると報じられています。

・シカゴ     460億円
・ロンドン    380億円
・シドニー    240億円
・メルボルン     150億円
・ロサンゼルス    140億円

中華系の方は、親類や同郷出身者のつながりを重視すると聞きますので、特定の地域に一旦集まりができると、そこに人も資金も集中する傾向があります。

オーストラリアにも、シドニー、ブリズベン、ゴールドコーストなど都市部には、中国の投資家を対象にした不動産仲介業者(店名も中国語)はたくさんあります。

海外旅行のついでに物件を視察して、キャッシュで買っていくようです。

Data source: Business Insider Australia 78日付記事

オーストラリア人口拡大の要因

日本の人口は、2013年の1年間で、約23万人の減少でした。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、これまでの傾向が続いた場合、2048年には1億人を割り込み、2060年には8,674万人と、現在と比べて3割の減少が予測されています。

  Source: 国立社会保障・人口問題研究所

一方、オーストラリアの人口は、20133月末までの1年間で、約40万人増加しました。総人口が2,300万人ですので、1.8%の増加です。(移民・国境警備省データ)

増加の要因は、60%が移民の増加、40%が自然増です。
以下のグラフの「移民の純増数(NOM)」を見ると、資源ブームに沸いた数年前のピーク時には劣りますが、歴史的に見て高い水準で推移しています。


移民に関しては、近年、概ね50万人が新たに流入し、25万人が流出しています。差し引きで毎年25万人ほど、オーストラリアに留まる人が増えている状況です。
そして当面の間、このペースでの移民増加が予測されています。

なお、流入としてカウントされているのは、12か月以上滞在可能なビザを取得してオーストラリアへ越してきた人数で、留学、ワーホリも含まれています。
必ずしも国籍取得、永住というわけではありませんが、毎年、流出よりも流入のほうが多いことから、ビザの更新などで事実上の永住になっている方が多いようです。

また、統計上、流入、流出数には、それぞれ約8万人のオーストラリア国籍者も含まれています。
特に若い人には、ロンドンに住んでみたいという人が大勢います。それでも、4、5年経つとオーストラリアに戻ってくる人も多いようです。流入、流出数には、こうしたオーストラリア人移住者の数も含まれています。


次に、人口の自然増についてです。オーストラリアの自然増は、毎年15万人程度です。
出生率は1.9ですので、先進国の中では高い出生率を保っています。
もっとも子供の数がどんどん増えているわけでなく、自然増の要因は、寿命の延びにあるようです。

出生率が人口維持に必要とされる2.1を下回っており、長期的には人口の平均年齢の上昇が徐々に進んでいくと予測されています。
もっとも、アジアを中心に30歳前後の若い移民が入ってきており、当面は高齢化社会とは無縁のようです。
なお、現在の平均年齢は37歳で、2040年は40歳になると予測されています。(日本は現在で45歳、2040年で50歳)

ところで、日本でも人口維持の手段として、移民受入れが議論されています。もっとも、高度人材ということで選別をするのであれば、伝統的に移民に選好されているアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどと、高度人材を引き付ける魅力で競争しなければなりません。

仕事がある間だけの出稼ぎ移民ならニーズはあるかもしれません。しかし、人口の維持という観点で移民を迎えるのであれば、長らく家族とともに日本に留まり、納税、社会保障の負担、そして次世代の育成でも貢献してもらう必要があるでしょう。

制度として移民の受け入れを開始するだけでなく、他の受け入れ国と比較して相応のメリットを提供できるか、祖国を離れてまで人生を過ごす場所として魅力を感じてもらえるかがポイントになるのではないでしょうか。

消費の伸び緩慢に

オーストラリアでは、家計の消費動向は住宅価格を占うバロメーターとされています。

仕事が確保され、所得も上昇すると見込まれる状況では、消費が増えると共に、安心して住宅ローンを組む人が増え、ひいては住宅価格の上昇につながるということです。

逆に、失業が増え、給料も下がるような状況だと、消費が減ると共に、新規に住宅ローンを組む人が減ることに加え、住宅ローン返済が滞って売却せざるを得ないケースが増え、住宅の需給バランスが崩れて価格が下がるということになります。

このほどANZ銀行(豪4大銀行の一角)が発表した2014年第一四半期の家計の消費調査によると、消費の伸びは0.5%に留まったようです。

ここしばらくは四半期ごとに0.7%程度の上昇が続いていました。伸びは続いているものの、ここにきて成長のスピードが落ち着いています。
今後、住宅価格の上昇も落ち着いてくることを示唆しているかもしれません。

また、ANZ銀行は、所得の伸びが緩慢であることから、2014年を通して消費の伸びはわずかなものに留まると予想しています。

一方、来年度については、資源分野以外の業種が勢いを取り戻すにつれて、数字が改善するとの予想が示されています。

2014/07/08

アジア富裕層はどこに投資しているのか

近年、日本では海外不動産といえばマレーシアが人気ですが、アジア諸国の富裕層はどの地域に注目しているのでしょうか。

世界にネットワークを持つHSBC銀行が、アジアの富裕層顧客を対象に行った調査があります。
対象国は、中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、台湾の7か国(地域)です。
調査国によって基準は異なりますが、概ね、投資可能な資産(自宅を除く)を数千万円以上保有している個人が対象です。

調査対象7,245名のうち、2,700名(37%)が海外に不動産を所有していると回答しています。かなり高い割合です。

日本では富裕層の3分の1以上が海外不動産を所有ということはないでしょう。日本では市場規模、成熟性、安定性が高く、国内でも投資先が豊富ということもあるでしょうが。

アジア諸国の富裕層は、海外不動産への投資はハードルが高いとは感じていないようです。

それでは、アジア諸国の富裕層の投資行動を見ていきましょう。

海外に不動産を所有していると回答した者のうち、不動産の所在国は以下(抜粋)のようになっています。なお、複数国に所有している場合は、重複してカウントしているようです。

中国(本土)の富裕層
・香港 49
・アメリカ 28
・シンガポール 14
・オーストラリア 9
・イギリス 9
・台湾 9
・ニュージーランド 6
・マレーシア 4

香港の富裕層
・中国(本土) 72
・アメリカ 13
・シンガポール 12
・イギリス 11
・台湾 11
・オーストラリア 10
・マレーシア 8

シンガポールの富裕層
・マレーシア 39
・オーストラリア 19
・インド 16
・中国(本土) 13
・香港 10
・イギリス 10

マレーシアの富裕層
・シンガポール 36
・オーストラリア 26
・イギリス 14
・インドネシア 12
・中国(本土) 12
・ニュージーランド 11

インドネシアの富裕層
・オーストラリア 19
・シンガポール 17
・アメリカ 17
・イギリス 16
・中国(本土) 14
・マレーシア 4

Source: HSBC

成長の見込める地域のうちで、地理的に近い国、歴史的経緯で繋がりのある国への投資傾向が見て取れます。取引制度の整備、外国人の所有権保護も選好に影響しているでしょう。

日本では海外の不動産投資といえば、手ごろな価格のマレーシアがブームです。

一方、地続きの隣国シンガポールを除いて、中華圏での注目度はそれほどでもないようです。本件調査は、数千万円程度の物件であればキャッシュで買えるような富裕層を対象にしていますので、「価格の安さ」が選好されていないこともあるでしょう。

隣国にも関わらず、インドネシアでも、マレーシアへの投資人気は意外と低いようです。

こうして見ると、マレーシアの不動産に資金を注いでいるのは、外国勢では主に日本とシンガポールの投資家という構図かもしれません。マレーシアの現地富裕層が、国内と国外、どちらの不動産をより選好しているのかも知りたいところです。

また、調査対象国によってはアメリカ、イギリスへの投資も上位に顔を出していますが、アジア・大洋州地域での投資先を見ると、オーストラリア、シンガポールはいずれの国でも人気の高い投資先となっています。

2014/07/04

不動産市場の透明性ランキング
-豪州3位、日本26位

世界の不動産市場の透明度を数値化した「グローバル不動産透明度調査」(不動産サービス世界大手のJLLグループ)が発表されました。

評価の指標は、公正な価格査定方法、市場全体の動きを把握できる指標(インデックス)の整備、法制度の整備、情報の得やすさ、取引のプロセスが簡明であることなどです。

最上位の「透明性が高い」と評価されたのは9か国。
上位から順に、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、カナダ、オランダ、アイルランド、フィンランドとなっています。

英語圏で英米法体系の国が多くランクインしているようです。
一ところに定着する志向が少いためか、不動産取引や人の移動の流動性が高いという文化的な背景も、取引のしやすい法制度の整備や市場データの豊富さに影響しているかもしれません。

オーストラリアでは、人口数千人から1万人程度で区切った地区(Suburb)ごとに、空室率、平均価格・家賃の情報があり、誰でも簡単に手に入ります。
なお、平均価格・家賃については、戸建て・マンション別、ベッドルーム数別のデータが提供されています。

「あの地区では平均価格が1年で10%、ここ3か月だけでも3%上がった」とか、「この地区では空室率が1%しかない」といった会話が、親戚同士でも交わされることがあります。

オーストラリアでは、政府が個別の取引価格を把握していることも透明性の向上に貢献しているでしょう。
不動産取引税の税額算出(基本的には、取引価格×税率)の関係で、売買契約書、銀行ローン書類の写しを州政府に提出しなければなりません。
罰則の重さを考えれば、ちょっとした節税のために金額をごまかすよりも、正確な金額を報告したほうが身のためという仕組みになっています。

ランキングの話に戻りますと、2番手グループ「透明である」と評価されたのは、全体の順位で10位から28位とされた19か国。
日本は全体の26位で、「透明である」の中では最下位グループの位置づけです。
アジアでは、13位シンガポール、14位香港、27位マレーシアとなっています。日本は、近年日本人投資家に人気のマレーシアと同程度との評価です。

日本は市場の規模、成熟性の割に透明性が低いと評価されていますが、市場データの充実度が限定的であること、また、取引プロセスの点で、(事実上の)双方代理が可能なことや、共益費内訳の透明性が低いことなどが原因に挙げられています。

なお、オーストラリアでは、一つの業者が、売り手と買い手、双方の仲介業者となること(仲介手数料を双方からもらう両手取引)はできません。仲介業者が誰の利益を代表して交渉しているのか明確にする趣旨です。

その下のグループ「やや透明でない」と評価されたのは29位から61位まで。
アジアでは、29位台湾、35位中国(Tier1の大都市)、36位タイ、38位フィリピン、39位インドネシア、43位韓国、などとなっています。

インドネシアの成長性は我々も注目していますが、現状、外国人名義では不動産を所有できませんので、不動産企業の株か、REITの活用が現実的なところでしょうか。

さらに下位の「透明性が低い」と評価されたのは62位から82位まで。
この中には、68位ベトナムが含まれています。

最下位「不透明である」と評価されたのは83位から102位まで。
アジアでは、100位にミャンマーが含まれています。

透明性が低い市場のほうが、情報を握る者、情報をコントロールできる立場にある者が大きな利益を上げるチャンスが高いと思われます。
地元のプロにとっては、かえってそのほうがおいしい市場と言えるかもしれません。

一方で、そうした市場は、一般の投資家には厳しい環境と言えるでしょう。

日本では、本当に良い案件の情報が流れると、不動産業者がすぐに自分で買ってしまうので、個人までは情報が降りてこないとよく言われています。

2014/07/02

シドニーが15%上昇
-オーストラリア住宅市況 2014年6月時点

オーストラリア主要8都市の住宅価格(実際に売買が行われた価格の中央値)は、前年同月比で10.1%上昇しました。
主な都市の上昇率は以下のとおりです。

・ シドニー  15.4
・ メルボルン     9.4
・ ブリズベン     7.0

上記キャピタルゲインに家賃収入を加えた年間総リターンは、以下のとおりです。

・ シドニー     20.2
・ メルボルン    13.3
・ ブリズベン    12.2

 ※ 不動産市況調査会社RP Dataによる数値
   (20146月末時点)

   Source: RP Data
                 PropertyUpdate.com.au

20143月時点での年間上昇率と比べると、
・ シドニーは勢いを維持(さらなる加速なし)
・ メルボルンは減速
・ ブリズベンは上昇が加速、との傾向が見られます。

この間の物価上昇率(CPI)は約3%でしたので、実質的な資産価値の上昇は、上記の数値から少々割り引かなくてはなりません。

なお、オーストラリアでは、地価(土地の価格)ではなく、戸建ての場合も土地・家屋一体で、実際に取引された価格のデータが使われるのが一般的です。
また、平均値ではなく、中央値(median:高さの順に並べたときに全体の真ん中に位置する値)が使われています。

ところで、先日公表された日本の路線価(20141月時点)では、東京都が前年比1.8%上昇、全国平均はマイナス0.7%でした。

東京で最も上昇した地点は、商業施設やオフィスが集積する銀座、新宿や、東京オリンピック開催による再開発が期待される湾岸地区で、前年比10%程度の上昇と報じられています。

総務省が発表した20145月のCPIは前年比3.4%上昇、消費税の影響分を除くと1.4%の上昇です。
物価も考慮に入れると、実質的な地価の上昇は、東京都でも全体では横ばいといったところです。

日銀も2%程度の物価上昇をターゲットにしていますので、少なくとも年2%以上の地価上昇が続かないと、実質的な資産価値は目減りすることになってしまいます。