近年、日本では海外不動産といえばマレーシアが人気ですが、アジア諸国の富裕層はどの地域に注目しているのでしょうか。
世界にネットワークを持つHSBC銀行が、アジアの富裕層顧客を対象に行った調査があります。
対象国は、中国、香港、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、台湾の7か国(地域)です。
調査国によって基準は異なりますが、概ね、投資可能な資産(自宅を除く)を数千万円以上保有している個人が対象です。
調査対象7,245名のうち、2,700名(37%)が海外に不動産を所有していると回答しています。かなり高い割合です。
日本では富裕層の3分の1以上が海外不動産を所有ということはないでしょう。日本では市場規模、成熟性、安定性が高く、国内でも投資先が豊富ということもあるでしょうが。
アジア諸国の富裕層は、海外不動産への投資はハードルが高いとは感じていないようです。
それでは、アジア諸国の富裕層の投資行動を見ていきましょう。
海外に不動産を所有していると回答した者のうち、不動産の所在国は以下(抜粋)のようになっています。なお、複数国に所有している場合は、重複してカウントしているようです。
中国(本土)の富裕層
・香港 49%
・アメリカ 28%
・シンガポール 14%
・オーストラリア 9%
・イギリス 9%
・台湾 9%
・ニュージーランド 6%
・マレーシア 4%
香港の富裕層
・中国(本土) 72%
・アメリカ 13%
・シンガポール 12%
・イギリス 11%
・台湾 11%
・オーストラリア 10%
・マレーシア 8%
シンガポールの富裕層
・マレーシア 39%
・オーストラリア 19%
・インド 16%
・中国(本土) 13%
・香港 10%
・イギリス 10%
マレーシアの富裕層
・シンガポール 36%
・オーストラリア 26%
・イギリス 14%
・インドネシア 12%
・中国(本土) 12%
・ニュージーランド 11%
インドネシアの富裕層
・オーストラリア 19%
・シンガポール 17%
・アメリカ 17%
・イギリス 16%
・中国(本土) 14%
…
・マレーシア 4%
Source: HSBC
成長の見込める地域のうちで、地理的に近い国、歴史的経緯で繋がりのある国への投資傾向が見て取れます。取引制度の整備、外国人の所有権保護も選好に影響しているでしょう。
日本では海外の不動産投資といえば、手ごろな価格のマレーシアがブームです。
一方、地続きの隣国シンガポールを除いて、中華圏での注目度はそれほどでもないようです。本件調査は、数千万円程度の物件であればキャッシュで買えるような富裕層を対象にしていますので、「価格の安さ」が選好されていないこともあるでしょう。
隣国にも関わらず、インドネシアでも、マレーシアへの投資人気は意外と低いようです。
こうして見ると、マレーシアの不動産に資金を注いでいるのは、外国勢では主に日本とシンガポールの投資家という構図かもしれません。マレーシアの現地富裕層が、国内と国外、どちらの不動産をより選好しているのかも知りたいところです。
また、調査対象国によってはアメリカ、イギリスへの投資も上位に顔を出していますが、アジア・大洋州地域での投資先を見ると、オーストラリア、シンガポールはいずれの国でも人気の高い投資先となっています。