2014/07/04

不動産市場の透明性ランキング
-豪州3位、日本26位

世界の不動産市場の透明度を数値化した「グローバル不動産透明度調査」(不動産サービス世界大手のJLLグループ)が発表されました。

評価の指標は、公正な価格査定方法、市場全体の動きを把握できる指標(インデックス)の整備、法制度の整備、情報の得やすさ、取引のプロセスが簡明であることなどです。

最上位の「透明性が高い」と評価されたのは9か国。
上位から順に、イギリス、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、カナダ、オランダ、アイルランド、フィンランドとなっています。

英語圏で英米法体系の国が多くランクインしているようです。
一ところに定着する志向が少いためか、不動産取引や人の移動の流動性が高いという文化的な背景も、取引のしやすい法制度の整備や市場データの豊富さに影響しているかもしれません。

オーストラリアでは、人口数千人から1万人程度で区切った地区(Suburb)ごとに、空室率、平均価格・家賃の情報があり、誰でも簡単に手に入ります。
なお、平均価格・家賃については、戸建て・マンション別、ベッドルーム数別のデータが提供されています。

「あの地区では平均価格が1年で10%、ここ3か月だけでも3%上がった」とか、「この地区では空室率が1%しかない」といった会話が、親戚同士でも交わされることがあります。

オーストラリアでは、政府が個別の取引価格を把握していることも透明性の向上に貢献しているでしょう。
不動産取引税の税額算出(基本的には、取引価格×税率)の関係で、売買契約書、銀行ローン書類の写しを州政府に提出しなければなりません。
罰則の重さを考えれば、ちょっとした節税のために金額をごまかすよりも、正確な金額を報告したほうが身のためという仕組みになっています。

ランキングの話に戻りますと、2番手グループ「透明である」と評価されたのは、全体の順位で10位から28位とされた19か国。
日本は全体の26位で、「透明である」の中では最下位グループの位置づけです。
アジアでは、13位シンガポール、14位香港、27位マレーシアとなっています。日本は、近年日本人投資家に人気のマレーシアと同程度との評価です。

日本は市場の規模、成熟性の割に透明性が低いと評価されていますが、市場データの充実度が限定的であること、また、取引プロセスの点で、(事実上の)双方代理が可能なことや、共益費内訳の透明性が低いことなどが原因に挙げられています。

なお、オーストラリアでは、一つの業者が、売り手と買い手、双方の仲介業者となること(仲介手数料を双方からもらう両手取引)はできません。仲介業者が誰の利益を代表して交渉しているのか明確にする趣旨です。

その下のグループ「やや透明でない」と評価されたのは29位から61位まで。
アジアでは、29位台湾、35位中国(Tier1の大都市)、36位タイ、38位フィリピン、39位インドネシア、43位韓国、などとなっています。

インドネシアの成長性は我々も注目していますが、現状、外国人名義では不動産を所有できませんので、不動産企業の株か、REITの活用が現実的なところでしょうか。

さらに下位の「透明性が低い」と評価されたのは62位から82位まで。
この中には、68位ベトナムが含まれています。

最下位「不透明である」と評価されたのは83位から102位まで。
アジアでは、100位にミャンマーが含まれています。

透明性が低い市場のほうが、情報を握る者、情報をコントロールできる立場にある者が大きな利益を上げるチャンスが高いと思われます。
地元のプロにとっては、かえってそのほうがおいしい市場と言えるかもしれません。

一方で、そうした市場は、一般の投資家には厳しい環境と言えるでしょう。

日本では、本当に良い案件の情報が流れると、不動産業者がすぐに自分で買ってしまうので、個人までは情報が降りてこないとよく言われています。